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【症例報告】
心肺停止より救命し得た子宮筋腫による高度貧血(Hb 1.3 g/dl)の1例
助川 明子, 茂田 博行, 神田 義明, 吉田 浩, 杉浦 賢, 長田 久文
横浜市立市民病院産婦人科
子宮粘膜下筋腫による貧血のため,ヘモグロビン値が1.3 g/dlまで低下し心肺停止状態に至った症例を経験した.症例は,49歳,3回経妊2回経産婦で,呼吸困難感を主訴に救急車にて来院した.末梢血液検査所見ではヘモグロビン値が1.3 g/dlと高度の貧血と肝腎機能障害を認めた.諸処置施行中に意識レベルが低下,心肺停止状態となったため,ただちに心肺蘇生を開始した.2分後には,自己心拍,自発呼吸が再開,34分後には意識レベルも改善した.粘膜下筋腫を原因とした子宮出血の持続による高度貧血と貧血に起因する心不全,肺水腫,さらには播種性血管内凝固症候群(以下DIC)であった.この時点で性器出血は止血していたため,婦人科的処置に優先して全身状態の改善を図った.ICU管理下で,貧血に対して濃厚赤血球輸血および新鮮凍結血漿輸血を行い,肺水腫に対して呼吸管理とステロイド,利尿剤の投与および輸液管理を行った.また,DICに対してはメシル酸ガベキサート,ウリナスタチンを投与した.蘇生後4日目には全身状態が改善し,気管内チューブを抜管した.蘇生後9日目に性器出血が再び出現し,翌日,腹式単純子宮全摘術を施行した.摘出子宮には8 cm大の粘膜下筋腫を認めた.術後は順調に経過し独歩退院となった.子宮筋腫のような良性疾患であっても死に至る危険があることから,産婦人科検診の重要性を広く普及していく必要があると考えられた.
Key words:uterine myoma, anemia, cardiopulmonary arrest
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 45(1)
15-20, 2008
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