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【症例報告】
妊娠中に妊娠高血圧症候群を認めず,産褥期に無症候性に発症したHELLP症候群の1例
柿沼 敏行, 古屋 潮, 山本 範子, 永石 匡司, 松浦 眞彦, 長田 尚夫, 山本 樹生
日本大学医学部産婦人科(駿河台日本大学病院)
HELLP症候群は,溶血,肝機能異常,血小板減少の三症候を呈する症候群で妊娠高血圧症候群(PIH)との関連が示唆されている.今回,我々は妊娠経過中にPIHを認めず,術後,定時の血液検査所見により診断した無症候性のHELLP症候群症例を経験した. 症例は35歳,1経妊0経産.既往歴として血小板減少性紫斑病と子宮筋腫がある.続発性不妊症のために前医でIVF-ETが施行され妊娠が成立した.妊娠初期より当院で妊婦健診を施行し経過観察していた.妊娠初期の血液検査では,異常所見は認められなかった.妊娠経過は順調で,特記すべき所見はなかった.妊娠36週0日,筋腫核出術既往があるため予定帝王切開術目的に入院し,妊娠37週0日に選択的帝王切開術で分娩した.術後翌日の血液検査で,血小板低下,肝機能異常,LDHの上昇,凝固系の亢進を認め,HELLP症候群・DICと診断し,DICに準じた治療およびステロイド療法を開始した.血液検査所見は速やかに改善し,術後16日目に母児ともに退院となった. 妊娠経過中に妊娠高血圧症候群等を認めず,low risk群と想定された症例においても,産褥HELLP症候群を念頭においた血液検査を行い,的確かつ迅速に対応することが重要であると考えられた.
Key words:HELLP syndrome, puerperal period, pregnancy induced hypertension(PIH), steroid therapy, fertility
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(1)
27-32, 2009
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