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【症例報告】
妊娠21週に出生前診断した心内膜弾性線維症の一症例
深田 幸仁1)2), 朝田 嘉一1), 伊東 敬之1)
1)独立行政法人国立病院機構甲府病院産婦人科 2)塩山市民病院産婦人科
心内膜弾性線維症は予後不良な疾患である.今回われわれは,妊娠21週に心内膜弾性線維症と出生前診断した症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する. 症例は31歳の2回経産婦(2005年;妊娠40週,3,162 gの男児を正常分娩,2006年;妊娠24週,742 gの男児を胎児水腫および子宮内胎児死亡のため死産).既往歴および家族歴に特記すべきことなし.現病歴は,妊娠21週の妊婦健診時に胎児水腫が認められたため当院を紹介され受診した.初診時の超音波断層検査にて心室中隔欠損およびエコー輝度の増強した房室弁・心室像所見を認め,かつ胸腹水を伴う胎児水腫を認めたため胎児心内膜弾性線維症と出生前診断した.informed consentのうえ経過観察したが,妊娠26週に子宮内胎児死亡を確認,妊娠27週に体重720 g,身長36.0 cmの男児を分娩した.胎盤病理組織検査所見ではウィルス感染および胎児貧血を示唆する所見などは認められず,絨毛染色体検査所見は46,XY,児の病理解剖所見では大動脈縮窄,動脈管開存,心室中隔欠損,右室肥大が認められた.病理組織所見では心内膜の肥厚および弾性線維の増殖および心筋内に2次的変化と考えられる石灰化所見は認められた. 超音波機器の性能の向上に伴い心内膜弾性線維症を妊娠早期に診断することが可能となったが,胎児期あるいは新生児早期に心不全徴候をきたした心内膜弾性線維症の予後は不良であるため現時点では早期診断が児の予後を改善できる可能性は少ないといえる.
Key words:pregnancy, prenatal diagnosis, endocardial fibroelastosis, hydrops fetalis
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(1)
33-36, 2009
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