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【症例報告】
妊娠25週に飛び降り自殺未遂にて多発外傷を負った後,集学的周産期管理により満期に生児を得た1例
水主川 純, 山本 直子, 中西 美紗緒, 岡 朱美, 桝谷 法生, 定月 みゆき, 五味淵 秀人, 箕浦 茂樹
国立国際医療センター戸山病院産婦人科
妊婦の自殺企図は母児に影響を及ぼし,救命や治療方針の決定に際し,母児の状態を速やかに把握し,迅速な診療が重要である.今回我々は,妊娠25週に飛び降り自殺未遂にて多発外傷を負った後,集学的周産期管理により満期に生児を得た症例を経験した.症例は25歳,初産婦,未婚.妊婦健診は近医に1回受診したのみであった.過量服薬後,自宅3階から飛び降り自殺を図り,妊娠25週1日,当センターへ救急搬送された.本人,実母の同意を得た上でX線およびCT検査を施行し,左腎損傷,左肺挫傷,多発骨折(左肩甲骨,左9〜12肋骨,左恥骨,第1,2,および5腰椎横突起)と診断した.産科的診察では常位胎盤早期剥離兆候を認めず,胎児心拍は正常であった.母体の循環動態は安定しており,ICUへ入室し,保存的治療の方針とした.腎損傷に伴う貧血(Hb 6.7 g/dl)に対し濃厚赤血球6単位輸血を要したが,全身状態は落ち着き,第3病日に産科病棟へ転棟した.床上安静から,段階的にリハビリテーションを進め,母児ともに順調に経過した.杖歩行可能となり,妊娠32週4日に軽快退院した.妊娠38週3日,予定帝王切開を施行し,2,762 g女児を娩出した.術後経過は母児ともに良好であり,術後8日目に杖なし歩行の状態で退院した.多発外傷のように母体救命救急医療を要する場合,初期治療から産科と救急部,整形外科などの複数の専門科が連携した診療が重要であると考えられた.
Key words:attempted suicide, multiple trauma, renal injury, pelvic fracture, pregnancy
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(1)
41-45, 2009
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