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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))
【教育講演】
早産管理の新しい視点
金山尚 裕
浜松医科大学産婦人科学教室教授
最近の研究から前期破水,切迫早産は絨毛膜羊膜炎が背景にあることが明らかになって きた.絨毛膜羊膜炎の前段階と考えられる細菌性腟症・腟炎,頚管炎対策を積極的に行っ ている施設では早産率が顕著に減少している.各種癌の5 年生存率に施設間格差があり社 会的に問題となっているが,周産期領域では早産率の施設間格差がクローズアップされる ことが考えられる.早産管理のポイントを紹介する. 早産の早期診断 早産の早期診断には早産マーカーと経腟超音波による画像診断が有用である.頚管粘液 中顆粒球エラスターゼは頚管炎をとらえるため,外来ベースでの絨毛膜羊膜炎のハイリス ク群抽出に効果的である.胎児性フィブロネクチンは絨毛膜トロホブラスト細胞で産生さ れ,絨毛膜と脱落膜の接触面および羊水に存在する.絨毛羊膜炎のII 度以上で高値を示し 早産の予知に優れている.経腟超音波による頚管長の測定は切迫早産の早期診断に有効で ある. 治療 絨毛膜羊膜炎の治療として抗生物質療法が使用されている.しかし抗生物質は菌により 感受性の差があり必ずしも奏功しないこともある.最近,早産の病態にintrauterine inflam‐ matory response が注目されている.そこで炎症性サイトカインの抑制作用をもつウリナ スタチンによる切迫早産治療が普及してきた.ウリナスタチン腟坐薬療法の臨床成績を提 示する. 早産の予防 絨毛膜羊膜炎のハイリスク因子に既往早産,細菌性腟症・腟炎,頚管炎(頚管ポリープ 等),性交渉,ストレスがあげられる.早産予防のためにはこれらの因子に対する対策が肝 要である.我々の行なっている予防対策を具体的に示したい.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3)
223-223, 2001
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