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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))
【教育講演】
ゲノムと遺伝子診断
高垣 洋太郎
北里大学医学部遺伝子学教室教授
医学にとって,2001 年は,まさに新世紀の幕開けとなった.長年待たれていたヒトゲノ ム・ヌクレオチド配列の概要が,2 月15 日号Nature 誌に国際ゲノム研究連合の報文とし て,翌2 月16 日号Science 誌にセレラ社の報文として,相次いで発表されたからである. 発表された内容には,予期せぬ発見があり,新発見は私たちの人間理解を大きく変える要 素を含んでおり,研究者は大きな研究転換を迫られている.他方,ゲノム創薬,プロテオ ミックス等,新しい造語も横行し始め,新バイオ産業の思惑も肥大しつつある.しかし, 現在,基本にもどって,冷静な目で見直してみる時期なのではないかと考える. ゲノムは,それぞれの生物の生活機能の調和を保つ上に欠くことのできない染色体の一 組と定義される.大まかにいえば,半数性の染色体の一組のことであり,ゲノムをA で表 わすと二倍性の生物の体細胞と生殖細胞のゲノム構成はそれぞれAA とA になる.ヒトの ゲノムは,染色体の1 番から22 番までと性染色体X かY のセットであり,全ゲノムは30 億のA ,C ,G ,T の4 種の塩基の配列である.このヒトゲノムの全塩基配列を解読決定す るのがヒトゲノムプロジェクト(human genome project )であり,1980 年代後半に国際的 協同プロジェクトとして計画された.まだ,90 数%解読された段階であり,精度も99.96 %位でなのだが,既に,2 つの特徴が明確となった.第一は,当初10 万程度あると予想さ れた遺伝子が,3 万から4 万しかないということで,第二は,各種の繰り返し配列が,全体 の48 %程を占めており,ヒトを特徴付けるAlu は全体の10 %程存在する事である.これ らの新発見が,遺伝子診断など,遺伝子医学にどのように影響してくるか,考えてみたい. 略語:Sines=Short Interspersed Nuclear Element SNP=Single Nucleotide Polymorphism 1 塩基多型
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3)
225-225, 2001
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