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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))

【教育講演】
産婦人科領域における静脈血栓症・肺塞栓症について


竹田 省
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター教授


 近年,我が国においても食生活,生活習慣の欧米化にともない,血栓症の増加が問題に
なっている.産婦人科領域においても術後や不妊治療の合併症として問題となり,また妊
産婦死亡に占める血栓性肺塞栓症の増加がクローズアップされている.欧米では妊産婦死
亡の主たる原因として肺塞栓症は恐れられているが,予防管理の徹底によりその頻度は1/10 にまで減少している.今回,婦人科領域における血栓症の病態,診断,治療および予防
法につき述べる.
血栓症の発生要因:Virchow の3 要素
 1 )血管壁の損傷:骨盤内手術や分娩,帝王切開は子宮内の動静脈の損傷を必ずともな
う.
 2 )血流の停滞:筋ポンプと呼吸ポンプ作用が重要である.下肢静脈環流には下肢の筋肉
を使用すること,すなわち「歩くこと」が大切である.筋弛緩を伴う長時間の麻酔,術中
の体位,腸ガーゼによる圧迫,妊娠子宮や骨盤内腫瘍は静脈を圧迫し血流の停滞をまねく.
 3 )血液凝固能の亢進:分娩中や術中,術後の脱水や嘔吐,激しい下痢でも血液濃縮
hemoconcentration となる.家族性凝固異常症や抗リン脂質抗体症候群,多血症,大量プロ
ゲステロン療法,経口避妊薬服用者も問題となる.
診断:症状,所見,画像診断(超音波断層法,カラードプラ法,静脈造影,シンチなど),
心エコー,血液検査
治療:1 )ヘパリン療法
 2 )線溶療法
 3 )下大静脈フィルター
予防対策:予防が最も重要であり,上述した三要素を考慮して管理する.
 1 )脱水,感染防止
 2 )血流停滞防止:下肢挙上,ストッキング
 3 )筋ポンプ,呼吸ポンプ,フットポンプの増強a )体位変換,下肢の運動,早期離床
b )間歇的下肢空気加圧法
 4 )低用量ヘパリン療法


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3) 231-231, 2001


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