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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(4) 産褥期に急性心不全を来した甲状腺機能亢進症合併妊娠の1例
織田 克利1), 丸茂 元三1), 三木 明徳1), 斎藤 真紀子1), 山口 俊一1), 松原 香弥1), 牧野 文則2), 久具 宏司1), 上妻 志郎1), 武谷 雄二1)
東京大学産婦人科1), 伊藤病院内科2)
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)合併妊娠は,コントロール不良例では,流早産,妊娠中毒症,IUGRを招きやすく,甲状腺クリーゼも来しうる.今回我々は,産褥期に甲状腺機能亢進症状が増悪し,急性心不全を呈した症例を経験した.症例は37歳,初産婦.16歳時にバセドウ病と診断され,22歳時に甲状腺亜全摘術を施行,後に再発し,メルカゾール(MMI)投与が再開された.初診時も甲状腺腫が著明であった.妊娠中,MMIを20〜30mg/dayで内服するも,FT3:7.7〜20pg/ml,FT4:2.7〜6.0ng/dlとコントロール不良であった.妊娠27週頃よりIUGRが認められたが,入院を拒否し,不定期な通院を続けた.妊娠39週0日,腹緊増強にて入院.IUGRに加え,羊水過少,妊娠中毒症(浮腫2+,蛋白尿2+,血圧132/64mmHg),貧血(Hb 8.1g/dl)が存在,CTGにて胎児仮死と診断され,同日緊急帝王切開術が施行された.児は2000g,男,Aps 8(1').術後,血圧上昇(170/80mmHg),頻脈(120/min)がみられ,さらにSaO2も92%と低下,胸部X線にてCTRの著明な拡大,肺水腫があり,心エコーでもEF低下(30%),肺高血圧(収縮期69mmHg)が認められ,急性心不全と診断された.FT3:12.6pg/ml,FT4:4.23ng/dlと高値であった.フロセミド,ニトログリセリン,ジゴキシン,及びMMI増量,ヨード薬投与により,速やかに心不全,甲状腺機能亢進症状は改善した.今回の心不全の原因としては,長期にわたる甲状腺機能のコントロール不良に加え,貧血,術後の頻脈,妊娠に伴う循環血液量の増加の関与が考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3)
242-242, 2001
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