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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(7) 正常経膣分娩後に生じた後腹膜腔内大量出血の1例
永松 健, 川村 久恵, 中川 圭介, 上里 忠和, 大岡 史子, 定月 みゆき, 梁 善光, 貝原 学
帝京大学医学部附属市原病院産婦人科
吸引分娩,鉗子分娩,クリステレル圧出法などの急速遂娩術後にはときに重篤な母体損傷を生じるが,このような医療介入のない正常経膣分娩後にそのような合併症が生じることは少ない.今回われわれは正常経膣分娩後に大量の後腹膜出血を生じ開腹手術にてその出血源を特定できた稀有な1例を経験したので若干の文献的考察と共に報告する.症例は30歳の1回経産婦.2000年9月11日を最終月経として妊娠し近医を受診,妊娠経過は特に異常を認めなかった.2001年6月11日(39週1日)同医にて自然陣発後に正常経膣分娩となった.児は3344gの女児でApgar Score(1‘)9点.分娩時間は5時間5分,分娩I〜IV期出血量も388mlと特に異常は認めなかった.分娩後2時間後から持続的な下腹部痛が出現した.輸液・鎮痛剤にて経過観察するもさらに症状は増悪し,血圧は低下傾向を示しショック状態となったため分娩約6時間後に当院へ搬送となった.来院時の血圧70/40mmHg,心拍数100bpm.子宮収縮は良好であり,外出血は正常範囲内の悪露のみであった.経腹超音波及び腹部CTにて子宮左後方の巨大な血腫と肝下面に達する腹腔内出血を認めたため止血及び原因検索目的で緊急開腹術を施行した.巨大血腫は子宮左側の後腹膜腔内に存在しこのため子宮は右方へ偏位していた.また広間膜後葉には裂孔生じ腹腔内への血液流出を認めた.後腹膜腔内の血腫を可及的に除去した後に出血源を検索したところ左基靭帯部の細動脈の断裂を認めたためこれを止血し手術を終了した.総出血量は1780mlであった.後腹膜腔には残存血腫を認めるものの術後経過良好で6月27日(術後16日目)退院となった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3)
250-250, 2001
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