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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩・産褥(8) 肺結核を強く疑うも,診断に苦慮した妊娠分娩症例
近藤 幸, 石川 浩史, 宮城 悦子, 高橋 恒男, 平原 史樹
横浜市立大学産婦人科
症例は36歳,1経妊1経産のアジア系外国人.4年前に母国で帝王切開の既往あり.妊娠初期より近医で妊婦検診を受けており,本人の希望により選択的帝王切開の方針としていたが,妊娠36週時の術前胸部X線写真上肺結核を疑わせる病変が発見された.症状は全くなく,喀痰・胃液の塗沫は抗酸菌陰性,ツベルクリン反応も陰性であったが,胸部CT上活動性病変であることは否定できず,精査・管理目的で当院に妊娠38週1日紹介となった.呼吸器内科医とも相談のうえ,分娩後に気管支鏡施行予定とし,妊娠39週1日選択的帝王切開術施行.2968g男児分娩(Apgar Score1分後8点,5分後9点)となった.分娩翌日に施行した児のツベルクリン反応の結果は陰性であった.しかし,児の胃液塗沫にて抗酸菌が陽性であった.このため先天結核を疑い,児は結核病棟に隔離となった.再検査にて胃液・便の塗沫が抗酸菌陽性であったため,抗結核薬(INH,RFP)の投与を開始した.母体は産褥6日目に気管支鏡を施行した.洗浄液塗沫の抗酸菌は陰性,気管支生検でも肺結核を疑わせる病変は検出されなかった.あらためて施行した喀痰,胃液,悪露,尿,血液各塗沫はすべて陰性であり,胃液の結核菌PCR,MAC PCRも陰性であった.このため,診断不確定のまま,予防的抗結核薬投与開始とした上で,母体は産褥7日目に退院した.児も胃液の培養(小川培地)で抗酸菌陰性,結核菌PCR,MAC PCRも陰性のため,月齢1ヶ月となる近日退院予定である.非定型抗酸菌や,何らかのアーチファクトである可能性も含めて検索中である.患者本人と家族の同意を得られたため,報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3)
252-252, 2001
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