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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))
【一般演題】
胎児・新生児(3) 先天性サイトメガロウイルス感染症を疑った,胎便性腹膜炎の一例
大森 万里子, 金子 透子, 小竹 譲, 小竹 和美, 伊澤 美彦, 田巻 勇次
松戸市立病院産婦人科
胎便性腹膜炎は胎便が腹腔内に漏出することにより起こる無菌性腹膜炎であり,一般的特徴的な超音波所見としてちらちらする胎児腹水,胎児腹腔内の石灰化,消化管拡張,羊水過多などがあげられている.今回我々は超音波所見にてclearな胎児腹水と陰嚢水腫のほか特徴的な所見を示さず,出生前診断に至らなかった症例を経験したので報告する.<症例>31歳,2経妊0経産.既往歴:16歳虫垂炎,23歳原因不明の急性肝炎,29歳イレウス.家族歴:特記すべきことなし.近医にて妊娠経過観察中,30週頃より胎児陰嚢水腫を,32週より胎児腹水を認めた.母胎血にてサイトメガロウイルス(CMV)IgG,IgMともに陽性であった.妊娠34週0日,当院紹介受診.陰嚢水腫と,clearな胎児腹水を認めたが,脳浮腫,皮下浮腫,胸水は認められなかった.脳,腹腔内に石灰化は認められず,羊水量も正常範囲内であった.妊娠37週4日,胎児腹水の増加を認め入院とした.37週5日,帝王切開術を施行し,2900gの男児をApgar score 1分値4点,5分値9点にて娩出した.児は,腹水貯留による腹満および陰嚢腫大を認めた.先天性CMV感染症を疑いガンシクロビル,CMV高力価γグロブリン投与を開始した.日齢1日,腹水穿刺にて黄茶色混濁の腹水を認めたがこの時点では診断に至らなかった.日齢2日,児のCMV抗原(−)にて先天性CMV感染症は否定された.胸腹部XP,CTにてfree air認め,消化管穿孔を疑い緊急手術となった.術中診断にて,回腸閉鎖および消化管穿孔による胎便性腹膜炎(generalized type)と診断され,小腸切除および端々吻合術を行った.児は日齢15,肥厚性幽門狭窄症とも診断されたが,経過は良好である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3)
259-259, 2001
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