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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))
【一般演題】
子宮奇形 傍子宮頸部嚢胞を形成した稀な完全中隔子宮の一例
梁 善光, 川村 久恵, 永松 健, 中川 圭介, 上里 忠和, 大岡 史子, 定月 みゆき, 貝原 学
帝京大学医学部附属市原病院産婦人科
完全中隔子宮は胎生12週までに消失する左右のMuller管間の隔壁が完全に残存することにより子宮頸部・体部がともに二分される子宮奇形である.通常は思春期に症状を呈することは少なく結婚後に妊娠あるいは不妊を主訴として来院し発見されることが多い.今回われわれは初経以来の月経困難症を主訴とし,子宮頸部に隣接した嚢胞を認め,これが完全中隔子宮の亜型であると疑われた一例を経験したので報告する.症例は18歳の未経妊婦.初経は14歳.経年的に生理痛が増強し17歳時に突然大量の黒褐色の性器出血が出現したため近医を受診.副角子宮を疑われ当科紹介となる.内診では子宮頸部は一つのみ.MRI,超音波検査上子宮内膜は二つに分かれており不全中隔子宮を疑わせたが,頸部左側に4cmの嚢胞性腫瘤が存在していた.DIPにて左腎臓の無形成と左尿管瘤の合併が判明した.その後も持続的に粘液性の血性帯下が続くため本年4月に嚢胞切除および尿管瘤切除術を施行した.開腹時子宮体部の形状・両側附属器とも正常所見であった.嚢胞は後腹膜腔内の子宮頸部に隣接する形で存在していたため,膀胱子宮窩腹膜を切開して嚢胞に到達し摘出した.嚢胞は頭側で右子宮腔と連続していたが左子宮腔との連続性は確認できず,尾側は盲端であった.また子宮頸管とは薄い隔壁のみで境されているのみであった.これらの所見からこの嚢胞性腫瘤は完全中隔子宮の左頸管部が膣と癒合できずに生じたものであり,内部の貯留液は頸管腺に由来するものと考えられた.病理所見でも尾側は扁平上皮が主体であり,頭側では頸管腺様の腺組織が分布していた.本症例の臨床所見と病理所見を提示し発生学的な考察を含めて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3)
266-266, 2001
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