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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))
【一般演題】
手術・麻酔 原因不明の卵管水腫による茎捻転の一例
吉岡 郁郎, 斉藤 慶弘
長野県立木曽病院産婦人科
卵管水腫のほとんどは,クラミジア・トラコマティス等の先行感染や子宮内膜症に伴う疾患であり,原因不明で発症することは極めて稀であると考えられている.今回我々は,性交渉を持ったことのない女性の卵管水腫の茎捻転例を経験したので報告する.症例は22才.既往歴,月経歴に特記すべき事項はなく,特に月経痛もなかった.平成12年11月30日未明,突然右下腹部痛を自覚したため当院救急外来を受診し,急性腹症の診断にて緊急入院した.右下腹部痛の鑑別のため当科紹介となり診察したところ,右下腹部に圧痛および反跳痛,さらに直腸診にてもダグラス窩から右付属器にかけて圧痛を認めた.さらに経腹超音波上右下腹部に120×112×89mmの単純嚢胞を認めたため,右卵巣嚢腫の茎捻転と診断し,即日緊急開腹手術を施行した.開腹所見では,右卵管が腫大し,右卵管角付近で,嚢腫様変化のない右卵巣を巻き込んで時計回りに540°の茎捻転を起こしていた.腹水や癒着は認められず,右付属器周囲やダグラス窩に子宮内膜症を疑わせる肉眼的所見も認められなかった.右卵巣は壊死していたため,右付属器切除術を施行した.術後経過に問題はなく,退院後,クラミジア抗体価は陰性で,月経の発来も確認した.また,病理所見においても子宮内膜症や感染を疑わせる所見は認められず,卵管水腫の原因は不明であった.性交渉の経験がなく,上行感染や子宮内膜症を疑わせる所見に乏しい女性の卵管水腫を経験したので,若干の文献による考察を加え報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3)
278-278, 2001
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