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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍(3) 癌性胸水に対し,ネダプラチン胸腔内投与が有効であった1例
石塚 康夫, 松本 隆万, 松本 直樹, 篠崎 英雄, 西井 寛, 渡辺 明彦, 落合 和彦, 田中 忠夫
東京慈恵会医科大学青戸病院産婦人科
プラチナ誘導体であるネダプラチンは,シスプラチンの腎毒性を克服し,卵巣癌に対する奏功率が37.3%と報告されている薬剤である.今回我々は,卵巣癌IV期の癌性胸水のコントロールにネダプラチンの胸腔内投与が有効であった症例を経験したので報告する.症例は,64歳女性,下腹部痛を主訴に当科受診.画像上,骨盤右側に直径8cmの一部充実性部分を伴った嚢胞性腫瘤,また右側胸水を認めた.胸水細胞診はclass V,CA125 122U/ml,CA19−9 158U/ml,卵巣癌の診断にて開腹となった.腹腔内に肉眼的播種性病変なく,内性器全摘術,大網部分切除術を施行した.病理学的検査より,明細胞腺癌を伴う粘液性腺癌(pT3a Nx M1 stage IV)の診断で,術後13日目パクリタキセル180mg/m2,ネダプラチン80mg/m2(TN)の腹腔内投与を施行した.その後胸水のコントロールつかず,4週間後にパクリタキセル180mg/m2静脈内投与,ネダプラチン80mg/m2を250mlとし2時間で胸腔内へ注入した.ネダプラチンの胸腔内投与時における薬物動態を調べるため,血中濃度測定を投与直前,投与終了直後,1,3,6,12,18,24,48,72,96時間後に行った.Cmax(μg/ml),AUC(μg/ml・hr),t1/2(hr),MRT(hr)はそれぞれ0.8,10.8,3.61,9.53であった.胸腔内投与後,胸痛,他胸部症状を認めず,右側胸水は化学療法施行5日目に減少した.現在周期的化学療法施行中であるが,胸水の再貯留は認めていない.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3)
295-295, 2001
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