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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))
【一般演題】
その他の腫瘍(1) 大網原発と思われる奇形種の一例
国東 志郎, 川口 理恵, 田部 宏, 和田 誠司, 平間 正規, 大浦 訓章, 新美 茂樹, 佐々木 寛, 落合 和徳, 田中 忠夫
東京慈恵会医科大学産婦人科
卵巣から発生した奇形種は卵巣腫瘍全体の15%程度をしめる比較的若年女性に好発する腫瘍である.しかしながら,ごく稀な発生母地として大網原発の奇形種が報告されている.今回我々は卵巣腫瘍を指摘されて当科を受診,開腹手術にて大網原発と思われる奇形種を経験したので文献の考察をまじえて報告する.症例は22歳の女性,未妊未産で既往歴・家族歴に特記事項はない.鼠径部の腫脹を主訴に外科を受診したところ,鼠径ヘルニアと卵巣腫瘍を指摘され当科を受診,精査の上同時に手術を施行することになった.開腹時,左卵巣は小児頭大に腫大し一部充実性の漿液性腫瘍を認めた.また右付属器付近は大網に覆われ,髪の毛,歯様の石灰部分は露出し,これと連続性に皮膚及び脂肪の含まれた鵞卵大の腫瘍を右腸骨窩に認めた.左卵巣嚢腫の摘出にて内部に奇形種を認めた.右卵巣は大網に覆われ周囲との癒着もあり,大網を切離後右卵巣の発生部位を検索したところ,約1cmの範囲で接していたためこれを切除し手術を終了した.Ramadaらの報告によると,これまでに7例の報告があり,大網と同時に卵巣にも奇形種を認め,両側性に認められる事もあり,年齢は23歳から70歳と多岐にわたり大網には卵巣組織が認められるものもあった.大網より発生する原因として,発生の過程でのgerm cellのmisplaceや卵巣の奇形種のimplantationなどが考えられている.本症例では右卵管がintactであること,組織学的には右卵巣は正常であったことから,卵巣由来の奇形種の破裂によるimplantationよりは大網原発であることが考えやすいように思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3)
301-301, 2001
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