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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))
【一般演題(奨励賞候補演題)】
周産期 ヘルペス科ウイルスの産道感染の可能性―妊婦の抗体陽性率と腟擦過細胞のウイルスDNA検出率との関連
笹 秀典1), 黒田 浩一1), 牧村 紀子2), 菊池 義公2), 田中 稔生3)
防衛医科大学校分娩部1), 防衛医科大学校産婦人科2), 東京医科歯科大学保健衛生学科3)
【目的】ヘルペス科ウイルスの胎児への感染経路は,母親が初感染を受ける場合と再活性化による感染の2通りがある.今回,単純ヘルペスウイルス(HSV)・水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)・EBウイルス(EBV)・サイトメガロウイルス(CMV)の4種類の胎内感染,産道感染の可能性に関して比較検討した.【方法】1999年4月から12月の間,研究に同意の得られた妊婦200例を対象とした.妊娠初期にHSV,VZV,EBV,CMVの抗体価をEIA法で調べ,同一妊婦の腟擦過細胞からDNAを抽出し,各々のウイルスDNAをPCR法にて検出した.【結果】妊婦のHSV,VZV,EBV,CMVの抗体陽性率はそれぞれ44%,97%,95%,68%であった.腟擦過細胞からの各々のウイルスDNA検出率は3.5%,0%,12.5%,13.5%であった.臍帯血からは各ウイルスDNAは検出されなかった.【考察】抗体陽性率の低いHSVは母親が初感染を受ける確率は高く,産道感染には要注意と思われた.IgG抗体価が陽性でIgMが陰性の患者において腟擦過細胞のウイルスDNA陽性率が7.9%に達しており,母子感染に対する再検討が必要と思われた.VZVは初感染,再活性化感染の機会は低く,母子感染率は極めて低いと思われた.EBVはVZVと同様胎内感染率は低いが,産道感染の可能性が高いことが示唆された.CMV抗体陰性妊婦が増加しつつあり,胎内,産道感染の可能性は高くなる傾向にあるため,異常児の発生に注意を要する.潜伏感染を特徴とするヘルペス科ウイルスの母子感染対策の再検討が望まれる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3)
309-309, 2001
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