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第102回学術集会(平成13年10月21日(日))
【一般演題(奨励賞候補演題)】
周産期 産褥パルボウイルスB19関連血球貪食症の1例
美崎 郁子, 中澤 禎子, 山代 美和子, 宮川 康司, 栃木 明人, 山本 樹生
日本大学医学部産婦人科(板橋病院)産婦人科
今回我々は分娩時腟壁裂傷(直腸腟瘻)罹患後の褥婦でパルボウイルスB19の初感染によると思われる血球貪食症候群を呈した極めて稀な症例を経験したので報告する.症例は32歳主婦,1回経妊1回経産.他院にて妊婦健診を受診し,妊娠39週4日,2,960gの女児をApgar score9点にて経腟分娩し,同日,裂傷を生じ縫合されたが,出血多量のため当院搬送入院となった.産褥2日にHb6.9mg/dlと貧血を呈し,濃厚赤血球2単位,新鮮凍結血漿2単位を輸血した.産褥8日に腟鏡診にてMicrofistulaの存在が疑われ,禁食として中心静脈栄養を開始した.産褥13日に39.4℃の発熱及び咽頭痛が出現したため,腟壁裂傷からの感染に続発した敗血症を疑い,各種細菌培養を施行したがいずれにおいても起炎菌は検出されなかった.同日よりセフォゾプラン4g/日の投与を開始.血液検査ではWBCとPLTの減少がみられ,LDHと肝酵素の軽度上昇を認めた.貧血は認められず,CRPの上昇は無かった.産褥14日に発熱と共にPLT7.8×104/μlとさらに低下していたため,敗血症によるDICの存在を疑い,IVH抜去した.ウイルス感染を考え,人免疫グロブリン2,5gを投与した.肝機能はさらに上昇したが,肝脾腫の所見はなかった.産褥16日に骨髄穿刺を施行し,赤芽球系の著明な減少とAplastic crisis,マクロファージの増加と血球貪食像が認められた.以上より,パルボウイルスB19による血球貪食症を考え,治療を支持療法とし,臨床症状は軽快した.感染経路として輸血を疑い,使用した血液製剤中のパルボウイルスB19DNAを測定したが全て陰性であり,輸血からの感染は否定された.また患者の血清中のパルボウイルスB19 IgMは陽性で初感染と確定診断した.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 38(3)
310-310, 2001
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