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第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【特別講演】
女性と心のケア
佐々木 直
東京大学ストレス防御・心身医学
心身症や精神疾患における性差は以前から知られています.多くの心身症や精神疾患において,女性の有病率は男性よりも高いといわれています.例えば,摂食障害では女性と男性の比はおよそ10 :1 です.また,気分障害や不安障害でも女性の方が男性よりも有病率が高いことが認められています. 摂食障害(Eating Disorder )は著しいやせを特徴とする,神経性食欲不振症(Anorexia Nervosa :AN )と,体重はほぼ正常範囲ですが短時間に大量の食物を摂取するむちゃ食いと自己誘発性嘔吐や下剤乱用などの排出行動を伴う神経性過食症(Bulimia Nervosa :BN )に分類されています.思春期から青年期女性の罹患率は急激に上昇しており,最近では約3 %と報告されています. 気分障害は,うつ病性障害(単極性うつ病)と双極性障害(躁うつ病)に分類されています.有病率について,双極性障害で性差は認められませんが,うつ病性障害では明らかに女性の方が高いことが認められています.女性に特有のうつ病性障害には,月経前うつ病,産褥期うつ病,閉経期に生じるうつ病などがあります. 不安障害の中で女性に発症する頻度が高い疾患は,あるとき突然に動悸,息苦しさ,めまい感などが生じ,そのようなパニック発作をくり返すパニック障害,さまざまな不安と心配が持続する全般性不安障害,外傷的な出来事の後に発症する心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder :PTSD )であり,女性の有病率は男性の約2 倍です. また,婦人科系の癌は女性性に関連した臓器に影響を与えるために重大なストレスになり,うつ病性障害や不安障害を発症しやすい傾向があります. これらの疾患は,早期発見・早期治療が重要であり,診断と治療を中心に述べます.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
94-94, 2002
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