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第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【特別講演】
女性と生活習慣病
山田 信博
筑波大学代謝内分泌学
最近,糖尿病や高脂血症,肥満が急速に増加している.これらの疾病は欧米型生活習慣に適応できない人々に発症することから,生活習慣病といわれ,しかも日本人にはありふれた病態であることから,現代の最も特徴ある病態となっている.生活習慣病という言葉は,従来の成人病に代わって厚生省が平成8 年に用い始めた用語である.成人病が加齢により避けられない疾患というイメージを起させるのに対して,成人病の発症には生活習慣が深く関与しており,生活習慣の改善によってその発症,進行を予防できることを広く知らしめ,若年層から注意を喚起することで早期発見のみならず,発症そのものの予防を推進しようとする意図を反映したものである.定義は「食習慣,運動習慣,休養,喫煙,飲酒等の生活習慣が,その発症・進行に関与する疾患群」である.今回は代表的な生活習慣に基づく病気として糖尿病,高脂血症,高血圧を主として取り上げるが,実はこれらの病気は生活習慣だけではなく,長寿とも深い関係がある.生活習慣が便利になり,栄養や衛生状態が良くなり,加齢と共に発症することも特徴である.苦痛のある病気とは対照的で,むしろ病気であることを自覚しにくい自己管理の困難な難病といえる.病気は静かに徐々に進行して,動脈硬化症を進行させることになる.生活習慣病は現代の生活習慣を共通の原因として発症することから,種々の生活習慣病を加齢と共にしばしば重複して同時に発症しうる病態でもあり,次第に循環器疾患や糖尿病性合併症などを発症して生命を脅かすようになる. 日本人の栄養病態は著しい変化をとげている.低カロリー,低脂肪に変わって,高カロリー,高脂肪,高単純糖質,運動不足の時代に入っている.従って,予防と治療の原則は食事療法と運動療法にあり,なかでも食事療法を疎かにして生活習慣病の治療がなされたとは考えられない.また運動療法は基礎代謝の低下した成人において,エネルギー消費を増加させ,筋肉を維持する基本的な治療である.そして,生活習慣と加齢が大きな原因であるから,年をとればとるほど健康的な生活習慣を意識すべきである.特に女性では脂肪の蓄積と筋肉の減少を予防したい.健康寿命を延ばすためには,この基本的な治療について早期に自己管理を確立するべきである.早期発見,早期自己管理により治療効果は格段と改善する.不十分な管理は,心血管疾患を知らない間に進展させ,生命を脅かし,生活の質を低下させてしまう.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
96-96, 2002
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