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第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【シンポジウム】
悪性腫瘍
落合 和徳
東京慈恵会医科大学
子宮頸癌 0 期.CIS は保存療法の対象であり,妊孕性の温存を希望する場合,あるいは子宮にほか の病変を認めない場合には子宮頸部円錐切除術を行う.なおその方法は問わない. Ia 期.Ia 1 期で,妊孕性温存を希望する場合には子宮頸部円錐切除術を行うこともある が,一般的には筋膜外子宮単純全摘術を行う.卵巣の合併切除は生殖年齢の婦人には行わ ない.Ia 2 期は広汎性子宮全摘術および骨盤リンパ節郭清の適応となる. Ib ・IIa 期.手術療法としては広汎性子宮全摘術およびリンパ節郭清術が選択される.放 射線療法も適応とされており,両者の5 年生存率は85 〜90 %で差はない.放射線と化学療 法の併用療法は有意に良好な成績を示している. IIb 期本邦では広汎性子宮全摘術も行われるが欧米ではおもに放射線療法が選択され る.ハイリスク症例には術後予防的放射線療法が行われている. III ・IVa 期.放射線およびシスプラチン併用療法の適応である. IVb 期標準的治療はなく,緩和医療,臨床試験の対象と考えられる. 子宮体癌 Ia 期およびIb 期grade 1 ,2 子宮単純全摘術,両側付属器切除術および骨盤リンパ節生検が標準的治療である.リン パ節転移が陰性であれば,術後の治療は不要である. 上記以外のI 期.上記手術に加え傍大動脈のリンパ節生検を行う.これらハイリスク群に 対する術後放射線療法は局所再発を減少はさせるものの,予後改善には至らず副作用の発 生が増加した.骨盤節のみが陽性の場合は総腸骨節を含めた全骨盤照射を追加することが 標準治療である.傍大動脈節が陽性の場合はむしろClinical trial の対象として化学療法お よび あるいは放射線療法が行われる(以下の各期も同様). II 期.上記手術および傍大動脈節および骨盤節郭清術が行われる.頸管浸潤のある場合に は広汎性子宮全摘術が摘要されさらに術後外照射および腔内照射を行う. III 期.一般的には手術と放射線の併用療法が選択される.しかし腫瘍の進展が著しく, 手術が不能な症例には放射線単独療法を行う.手術も放射線療法も行いえない患者には, 化学療法あるいは黄体ホルモン療法を行うこともある. IV 期.腫瘍の蔓延部位により治療の方針が異なる.骨盤腔に進展したbulky disease の場 合,放射線療法が選択される.しかし,遠隔転移のある症例ではむしろ化学療法や黄体ホルモン療法の適応となる. 卵巣癌 Ia 期.grade I で明細胞癌以外であれば片側付属器切除術のみ施行して妊孕性を温存す る.術後抗癌化学療法を行わない. Ia (上記以外)・Ib 〜IIIc 期.子宮全摘,両側附属器切除,部分大網切除,リンパ節郭清 (傍大動脈,骨盤節)を行う.ただし診断的リンパ節郭清は予後改善に関与しない.術後化 学療法として,Paclitaxel とプラチナ製剤の併用療法を選択する.進行例で術後化学療法が 著効した場合はさらにPaclitaxel を月1 回12 回投与する. IV 期.原則的にはIII 期に準ずる.ただし初回手術時にoptimal surgery が行いえない場 合には組織採取をおこない,化学療法3 〜6 コース後に腫瘍量減量手術を行う. このほか時間的に余裕があれば,膣・外陰癌,絨毛性疾患,卵管癌について言及する予 定である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
101-102, 2002
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