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第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【一般演題】
子宮体部悪性腫瘍(6) 子宮体部と両側卵巣に粘液性腫瘍を合併した1例
後藤 友子1), 林 直樹1), 長井 智則1), 斎藤 麻紀1), 大久保 貴司1), 馬場 一憲1), 竹田 省1), 糸山 進次2)
埼玉医科大学総合医療センター産婦人科1), 同病理2)
近年子宮温存を希望する若年婦人の子宮体癌に対する保存療法の試みなどの報告も増加している.我々は,不妊症治療中に診断し対処に苦慮した,子宮体部の高分化型粘液性腺癌に両側卵巣の粘液性嚢胞腺腫を合併した症例を経験したので報告する.症例は38歳,0経妊0経産,26歳結婚,2年間の避妊後自然妊娠に至らず31歳より他院不妊治療開始.33歳より当院通院.34歳より不正性器出血出現.子宮頚部細胞診Class I体部Class II,子宮内膜組織診は複雑型子宮内膜増殖症の診断.以降内膜組織診をフォローアップしつつ,高用量MPA療法,排卵誘発等施行していたが,35歳より両側卵巣に多房性嚢胞と子宮内腔への粘液貯留が出現し,帯下の増量を自覚し始めた.卵巣に対しては嚢腫摘出術を36歳と37歳で計2回施行,病理組織は粘液性嚢胞腺腫であったが,嚢腫の再発・増大は急速で経腟的卵巣嚢胞穿刺を2回施行した.子宮内膜全面掻爬組織診では複雑型子宮内膜増殖症に一部異型増殖症も疑われたが,明らかな内膜癌の所見は認めず,また高円柱状で粘液産生能を有するような腺管の顕著な増生を認めていた.子宮内膜増殖症と子宮内腔の粘液貯留,卵巣嚢腫の再発を繰り返し挙児は断念,38歳で子宮全摘と両側付属器切除術を施行した.術後の病理組織診断では,卵巣は粘液性嚢胞腺腫,子宮内膜は,円柱状細胞の配列した腺管構造の密な増生と一部乳頭状構造や粘液産生を示す部分を認め,わずかに筋層への浸潤を伴い極めて高分化型の粘液性腺癌と診断された.ほぼ同時期に子宮内膜と卵巣に粘液性腫瘍を発症,再発を繰り返した症例を経験し,経過と細胞病理組織所見を中心に呈示する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
114-114, 2002
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