|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【一般演題】
不妊・内分泌(2) 不妊治療における卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と急性腹症に関する考察―妊娠成立後のOHSS管理中に発症した汎発性腹膜炎の1例―
伊香 加納子1), 古谷 健一1), 村上 充剛1), 松田 秀雄1), 斎藤 恵子1), 川上 裕一1), 高橋 宏典1), 佐々木 直樹1), 笹 秀典2), 初瀬 一夫3), 菊池 義公1)
防衛医科大学校産婦人科1), 同分娩部2), 同外科学第13)
【緒言】最近,ART(assisted reproductive technology)に伴うOHSS管理では,抗凝固療法やドーパミン投与等が広く普及している.しかし,OHSSは一種の腹腔内炎症状態であり,他の腹腔内疾患が併発した場合には,患者の全身状態は急激に悪化する可能性が示唆されるが,重症例の報告は乏しい.最近,子宮内膜症(内膜症)患者に対するIVF-ET治療後のOHSS合併妊娠で,内膜症病巣の破裂と虫垂炎による重篤な汎発性腹膜炎を呈し,妊娠継続が不可能となった症例を経験したので,文献的考察とともに報告する.【症例】患者は32歳,既往歴は24歳で腹腔鏡下内膜症治療を受けている(AFS:3期).【源病歴】平成13年10月31日,IVF-ET後の双胎妊娠(妊娠6週)と中等度OHSSにて当科紹介入院.腹水貯留・卵巣腫大は著明でOHSSに対する治療を開始した.同年11月19日(妊娠9週),OHSS管理中に突然の急性腹症(WBC:20,300/mm3,CRP:18.6ng/ml,FDP:28μg/ml,D-dimer:17.8ng/ml)を呈し,緊急手術となった.術中所見は,1.癒着性内膜症病巣の破裂を示す褐色の1,200ml腹水(腹水IL-6:119,000pg/ml),2.高度の腸管浮腫,3.虫垂炎症を認め,虫垂切除と腹腔内ドレナージを実施した.その後急性膵炎と再度の汎発性腹膜炎(CRP:25.5ng/ml,FDP:21μg/ml,D-dimer:30.8ng/ml,AT-3:49%)を認め,切迫流産徴候も出現し妊娠継続が不可能となった.【結語】ART治療では中等度以上のOHSS発症が予測される場合には,初期胚は凍結しOHSS寛解後に胚移植する選択も必要と思われた.特に癒着性病巣の存在する内膜症不妊症ではより慎重な対応が求められると思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
145-145, 2002
|