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第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【一般演題】
絨毛性疾患 マイクロサテライトDNAの解析を応用した卵巣絨毛癌の1例
福山 千代子, 越野 哲郎, 吉田 正平, 難波 聡, 松本 光司, 中川 俊介, 八杉 利治, 久具 宏司, 堤 治, 武谷 雄二
東京大学産婦人科
卵巣絨毛癌は稀な疾患で妊娠性及び非妊娠性に分類され,それぞれ臨床像が異なることが知られており,その鑑別診断は容易ではなかったが,近年になりDNA解析がその鑑別を可能にした.マイクロサテライトDNAの解析により鑑別診断を行い,その結果,急速な発症転帰を辿った妊娠性卵巣絨毛癌と考えられた症例を経験したので報告する.症例は37歳0G0P.月経周期は30日型.2000年12月,不妊治療開始.基礎体温2相性.2001年3月6日よりを最終月経として4月14日妊娠反応陽性となり当科受診し,血中hCG異常高値及び径10cmの右付属器腫瘤を認めた.手術時の所見として,右付属器腫瘤は充実性で出血を伴っており,右付属器切除,左卵巣生検,子宮内容除去術を施行した.病理組織学的には,Cytotrophoblastの集団と異型の強いSyncytiotrophoblastよりなる卵巣絨毛癌と診断された.術後,MAC療法(MTX,Act-D,CPA)を5クール施行した.画像診断上子宮右側に径2cmの腫瘤が出現し,これを摘出した.組織学的には概ね壊死組織で腫瘍組織は認められなかった.さらにMAC療法2クール追加し,血中βhCG陰性により寛解判定し更に3クール化学療法を追加した.絨毛癌組織のパラフィンブロックより抽出したDNAと患者及び配偶者の血液より抽出したDNAを用い,キャピラリー電気泳動法によりマイクロサテライトDNAを解析し,腫瘍組織の遺伝子構成を検討した.複数のローカスにおいて腫瘍組織は患者の1つのアリルと配偶者の2つのアリルを持ち,3倍体であることが確認された.このような遺伝子構成を持つ卵巣絨毛癌は現在のところ報告がなく,疾患発症機序の解明の上で重要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
148-148, 2002
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