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第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【一般演題】
絨毛性疾患 脊髄硬膜転移を認めた臨床的絨毛癌の一例
関口 将軌1), 石橋 智子1), 増田 美香子1), 大塚 伊佐夫1), 渡邉 真夕2), 麻生 武志1)
東京医科歯科大学産婦人科1), 都立大塚病院産婦人科2)
絨毛癌は血行性転移を生じるが脊髄硬膜への転移は希である.今回我々は脊髄硬膜・肺に転移を認め,化学療法が奏効した臨床的絨毛癌の一例を経験したので報告する.症例は26歳,0経妊0経産.2001年2月10日から7日間を最終月経とし,4月24日(妊娠10週4日)に他院にて全胞状奇胎の診断で子宮内容除去術を,5月1日に再掻爬を施行したが,5月15日より血中hCG値が上昇した.5月25日頃より腰痛が出現し,以後下肢の麻痺・感覚障害と膀胱直腸障害が急速に進行した.当初は椎間板ヘルニアを疑ったが,MRI上L4椎体後面・硬膜外に8×20mmの腫瘤を認めた.さらにCTにて左肺底区に径10mmの腫瘤を認め,臨床的絨毛癌と診断した.6月7日よりMEA療法を開始し,6月25日にL4硬膜外腫瘍に対する整形外科手術を検討するため当院に転院した.しかし麻痺が完成していたため手術適応はないと考え,MEA療法を継続した.その結果血中hCG値はMEA療法開始前に57,000mIU/mlであったが5コース施行後には測定感度以下となった.以後2002年1月までに3コースを追加し(計8コース),血中hCGは測定感度以下を保っている.MRIではL4硬膜外腫瘍の縮小並びに馬尾圧迫所見の改善を認め,CTでは左肺底区の腫瘍が消失した.神経症状は自力歩行,腹圧による自力排尿・排便が可能なまでに改善している.絨毛癌は一般に特定の抗癌剤に対して感受性が非常に高い.この症例でも化学療法により,画像上はL4硬膜外に腫瘍が残存しているものの神経症状は著明な改善をみた.このような頻度の低い転移巣に対する治療方針については,手術適応を含めた今後の検討が必要であると考えた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
148-148, 2002
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