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第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【一般演題】
胎盤異常(2) 子宮全摘を余儀なくされた膜様胎盤の一例からの考察
小野 恵里奈1), 村岡 光恵1), 熊谷 万紀子1), 高木 耕一郎1), 黒島 淳子1), 太田 博明2)
東京女子医科大学第2病院産婦人科1), 東京女子医科大学産婦人科2)
膜様胎盤は胎嚢全体または大部分が絨毛組織で被われた状態で,胎盤は厚さ1〜2cmと薄いが分葉が認められるのが特徴とされる.膜様胎盤では約50〜85%の症例に分娩前後の大量出血を認め,胎盤剥離困難を伴うため癒着胎盤と診断されてしまうことが多い.膜様胎盤の頻度は2万から4万妊娠につき1例と報告されている.今回,我々は膜様胎盤にて,子宮全摘を余儀なくされた症例を経験したので報告する.症例は28歳,0経妊0経産,妊娠前にヘルペス感染の既往があるが,妊娠経過に特記すべきことはなかった.36週の健診で,経腹超音波上胎盤の分葉が大きく,全体に虫食い状に抜けている所見を認めた.40週4日前期破水にて入院,40週5日分娩誘発中,胎児仮死徴候を認め緊急帝王切開にて2,875gの男児を出産した.Apgar1分後9点.児娩出後,子宮は弛緩したままで,子宮筋層が非常に薄く胎盤が透見されるような状態を呈し,胎盤用手剥離を試みるも不可能で2,000mlの大量出血を認めたため子宮全摘術を施行した.胎盤は非常に薄く膜様に子宮内腔全面を被っていた.当初,高度な感染を伴った癒着胎盤と考えたが病理組織検査上膜様胎盤と診断された.癒着胎盤はMillerらによると,2500分娩に1(0.04%)とされており,そのほとんどは経産婦や子宮内容除去術経験者で初妊婦に合併することは非常に稀である.本症例はSTDの既往はあるが初産婦であった.また,最近では膜様胎盤の発生に遺伝的素因の関連や免疫学的因子との関連も報告されており膜様胎盤と癒着胎盤の発生学的な相違が示唆されている.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
160-160, 2002
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