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第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【一般演題】
合併症妊娠(3) 脊髄損傷合併妊娠の1例
野池 雅実, 小原 みほ子, 北 直子, 芦田 敬, 加藤 清, 金井 誠, 小西 郁生
信州大学産婦人科
日本での脊髄損傷発生率は4人/10万人と推定され,女性の頻度はその1/4である.近年の交通事故やスポーツ事故の増加に伴い,脊髄損傷を合併して妊娠に臨む女性の数は増加している.脊髄損傷者の妊娠分娩管理においては,尿路感染,貧血,褥創,早産,呼吸障害等多くの問題があり,特に第6胸椎より高位の脊髄損傷では,自律神経過反射(autonomic hyperreflexia;AH)が起こり,このコントロールが必要である.今回我々はT4 levelの脊髄損傷後の妊娠分娩例を経験したので報告する.症例は30歳,0回経妊.27歳時バイク事故で第4胸椎の脊髄損傷を受け,T5以下の麻痺となった.車椅子で移動し,排尿は自己導尿であり,尿や便の充満時に,AHによる血圧上昇を認めていた.妊娠15週で腎盂腎炎を発症し39℃台まで発熱したが,抗生剤投与にて軽快した.16週頃より,Hb8.1と貧血を認め,血小板数が10万に低下した.また,水腎症と膀胱尿管逆流を認めたため,膀胱カテーテル持続留置を開始した.36週頃より子宮収縮に伴い,顔面紅潮などのAHによる症状が出現した.38週2日,骨盤位のため選択的帝王切開を施行し,麻酔は全身麻酔と硬膜外麻酔を併用した.児は3,144gの女児でApgar scoreは8/8であった.術後,39℃台の発熱を認めたが,感染徴候はなくAHによるものと考えた.術後11日目に母児共に退院となった.AHは頭痛,顔面紅潮などと伴に発作性の高血圧を起こし,重症例では脳内出血の誘因ともなり得る.脊髄損傷者の妊娠分娩管理においてはAHをはじめ,脊髄損傷者に特有の問題点を十分理解した上での管理が重要であると思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
165-165, 2002
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