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第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【一般演題】
合併症妊娠(4) 当科で経験した周産期心筋症(Peripartum cardiomyopathy: PPCM)の5症例
水竹 佐知子, 亀田 高志, 篠崎 博光, 西郡 秀和, 片貝 栄樹, 今井 文晴, 田村 友宏, 高木 剛, 安藤 一道, 峯岸 敬
群馬大学産婦人科
PPCMは明らかな心疾患のない女性が妊娠,分娩を契機に原因不明の心不全を呈するもので比較的稀な疾患とされている.今回我々は1988年から2001年までにPPCMと診断された5症例を経験し,これらの妊娠時の背景について検討した.【症例】5症例のうち3例は品胎,1例は双胎,1例は単胎であった.この5症例は,平均年齢は,28.2±2.63歳,すべて初産婦であり,発症までに明らかな心症状はなく,他の心疾患を認めなかった.品胎3例を除く2例は妊娠中毒症を合併していた.これらのうち1例は双胎妊娠であり,重度の鉄欠乏性貧血発症,ITPを合併していた.この2例はそれぞれ,妊娠26週,35週にPPCMを発症し,母体適応により緊急帝王切開施行した.5例中品胎の3例には子宮収縮抑制剤(塩酸リトドリン)の投与がなされていた.分娩方法は,全て35〜36週の選択的帝王切開であり,このうち2例が分娩(帝切)直後にPPCMを発症,他の1例は産褥5日に発症した.全ての症例が,発症時期を問わず呼吸困難にて発症し,胸部X線写真にて心胸郭比の増大,心エコー上壁運動の低下が認められ,左心不全兆候を呈し,PPCMと診断された.発症後は心不全に対する保存的治療がなされ,全例正常心機能を回復した.【まとめ】PPCMのリスクファクターとして高齢者,妊娠中毒症,多胎妊娠,高血圧の合併,子宮収縮抑制剤の長期投与などが挙げられる.我々が経験した5症例はいずれもこれらリスクファクターのどれかを有していた.これらのリスクを持つ症例に対して,周産期合併症として重篤なPPCMの発症を念頭に置き,周産期管理をしていく必要があると考えられる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
167-167, 2002
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