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第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【一般演題】
周産期偶発合併症(2) 帝王切開術中に経食道心エコーにて肺塞栓を確定診断しえた全前置胎盤の一例
梅崎 泉, 安達 知子, 新井 理水, 橋口 和生, 松田 義雄, 太田 博明
東京女子医科大学産婦人科
妊娠に伴う静脈血栓塞栓症の報告が増加しているが,その多くは妊娠中および産褥期発症例で分娩中の報告はほとんどない.今回,全前置胎盤の緊急帝王切開術中に肺塞栓を発症し,経食道心エコーにて右房内血栓を証明した症例を経験したので報告する.【症例】36歳,1経妊1経産 既往歴・家族歴に特記事項なし.妊娠33週0日,全前置胎盤・出血のため当センターに母体搬送され同日緊急帝王切開術施行.全身麻酔下に胎児・胎盤を娩出した直後に,経皮酸素飽和度,呼気終末二酸化炭素分圧,収縮期血圧の急激な低下を認めたため即座にヘパリン5000単位を静注したところ,これらは速やかに回復した.発症の約10分後に経食道心エコーを施行し,右房内に充満する巨大な血栓を確認した.血栓は数分の経過で消失した.術中より継続して1.5〜2万単位/日のヘパリンを持続静注したところ,筋膜下巨大血腫の形成などから貧血の進行を認め,最終的には下大静脈フィルター挿入の上,2回の再開腹止血術を要した.また抗凝固療法の中断などから肺塞栓の再発を認め,治療に苦慮した.本症例の危険因子としては肥満(非妊時BMI 28)・高齢妊娠・前置胎盤に伴う安静等を認めたが,先天性/後天性血栓素因は認めなかった.【考察】1)迅速な診断と初期治療により救命しえたが,抗凝固療法に伴う術後出血や肺塞栓再発の対応に苦慮した.2)特に母体搬送緊急症例では,リスク評価やその術前対応も不十分であるため,予防は不可能である.手術中も含めて常に肺塞栓の発症を念頭においた管理と対応が必要と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
171-171, 2002
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