|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【一般演題】
周産期偶発合併症(3) 診断,治療に苦慮した妊娠23週時に発症し,小腸部分切除,帝王切開術に至ったイレウスの1例
根岸 秀明, 濱田 佳伸, 佐々木 奈奈, 星本 和種, 友部 勝実, 矢追 正幸, 星本 和倫, 掘中 俊孝, 榎本 英夫, 太田 順子, 林 雅敏, 大藏 健義
獨協医科大学越谷病院産婦人科
【緒言】妊娠中に合併するイレウスは稀ではあるが,一旦発症し,保存治療に反応しない場合には母児ともに重篤な状態に至ることがある.今回,我々は妊娠23週時に麻痺性イレウスを発症し,最終的に小腸部分切除,帝王切開術を施行した症例を経験したので報告する.【症例】27歳,0経妊0経産.既往歴:20歳時に卵巣嚢腫茎捻転にて腹式卵巣嚢腫摘出術.現病歴:近医にて妊娠管理中のところ,妊娠23週6日,急激に増悪する心窩部痛,嘔吐,背部痛を主訴として来院した.腹部レントゲンにて軽度niveauがみられ,WBC9200,CRP 0.62と炎症反応は著明ではなく,経鼻胃管を挿入し,絶食,補液を施行した.次第に腹部が膨満し,腸管蠕動はほとんどなく経腹超音波にて拡張した腸管を認め,麻痺性イレウスの診断となった.両側性に腎盂の拡張を認め,水腎症の疼痛による麻痺性イレウスを疑って尿管ステントを挿入したが,背部痛は軽快するも心窩部痛は軽快せず,イレウス管を挿入した.しかし症状は改善せず,患者同意のもとで妊娠25週3日,全身麻酔下にて開腹術を施行した.Treitz靭帯より約80cmの部位で小腸が後腹壁に癒着する型でbandが形成され,その上に子宮底部がのりかかる形であった.この部位を含めて小腸を部分切除し,端端吻合した.術後,症状軽快せず切迫早産となり,妊娠25週6日,骨盤位のため腹式帝王切開術にて1,164gの男児を分娩した.術後は症状は軽快し,児はNICU管理にて経過良好である.【考察】妊娠に合併するイレウスは,近年若年女子の婦人科疾患による開腹手術の増加に伴い,発症頻度が増加傾向である.本症例は子宮の裏側にbandが形成されていたため,診断に苦慮したものと思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
174-174, 2002
|