|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【一般演題】
胎児・新生児(1) 母の間接クームス強陽性でも児の状態良好だった一例
永井 晶子1), 内野 由美子2), 前田 英子1), 伊東 宗毅1), 福岡 佳代1), 井上 丈彦1), 根本 明彦1), 吉村 理1), 長阪 恒樹1), 黒澤 サト子2)
武蔵野赤十字病院産婦人科1), 武蔵野赤十字病院小児科2)
妊娠中に母の間接クームスが陽性をきたすと,児が溶血性貧血を起こすことが知られている.つまり母体血中のIgG型の不規則抗体が胎盤を通過して児に移行し児の赤血球の対応抗原に結合すると,胎児赤血球を溶血させ,胎児や新生児の貧血,胎児水腫,胎児死亡,新生児の重症黄疸をきたす.この重症度を決めるのは,胎盤を通過する抗体量,母の抗体のIgGサブクラス,抗体が胎盤を通過する時期,抗体阻止因子の有無,胎児赤血球における対応抗原の発達程度等であるといわれている.今回我々は間接クームス高値にもかかわらず,児は軽度の黄疸と貧血をきたしたのみであった症例を経験したのでこれを報告する.症例は30歳,1経妊1経産,A型+.前回は双胎で平成11年12月に腹式帝王切開を行った.輸血歴はない.今回妊娠35週で間接クームスが256倍(抗c抗体,抗E抗体)だったため,当院に紹介受診された.児の発育良好で,NSTも問題なかったが,児の予後を考え36週2日で帝王切開となった.児は2,806gの男児でアプガー9点,臍帯血による直接クームスは16倍陽性(抗c抗体,抗E抗体)であった.抗体のIgGサブクラスは1と3であった.早速予防的光線療法を開始し,その後軽度の黄疸出現したが光線療法再開で改善した.貧血も日齢8でHb9.0となったが,その後それ以上の低下がみられなかったため,日齢18で退院となった.このように間接クームス高値でも軽症型の溶血性貧血しかおこさないものもあり,その重症度を決めるのにはIgGのサブクラスが関係しているといわれている.今回はIgG1とIgG3であった.今回,軽症型の血液型不適合妊娠を経験したので,若干の文献的考察とともに報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
180-180, 2002
|