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第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【一般演題】
胎児・新生児(2) 胎児膀胱・羊水腔シャント術を行い妊娠中経過良好と考えられたが異形成腎となった胎児巨大膀胱症の一例
西岡 暢子, 仁科 秀則, 中村 靖, 吉田 幸洋, 木下 勝之
順天堂大学産婦人科
【緒言】胎児閉塞性尿路疾患に対し,胎児腎機能温存と胎児肺低形成回避を目的とし,膀胱・羊水腔シャント術が行われている.今回我々は巨大膀胱症の胎児に妊娠19週でシャント術を施行し,出生後は児の尿流出を認め,シャント術は有効であったと考えられていたが生後11カ月腎不全で死亡した症例を経験したので報告する.【症例】31歳,2経妊0経産婦.妊娠18週に胎児巨大膀胱を指摘され当院紹介.初診時超音波検査では,両側水腎水尿管症を伴った胎児巨大膀胱を認め,羊水量はほとんどなかった.胎児治療のインフォームドコンセントを得た上で,妊娠19週2日,人工羊水を子宮内に注入し,ダブルバスケットカテーテルを用いた胎児膀胱・羊水腔シャント術を行った.その後羊水量は保たれ水腎水尿管症は認められず,シャント術の効果は良好と判断し外来管理とした.しかし妊娠30週,再び羊水過少と腎実質の萎縮を疑わせる所見を認め,胎児腹腔内に腟瘤水腫を疑わせる2房性の嚢胞が出現.羊水過少に対し人工羊水注入を行ったが,妊娠34週0日自然破水し帝王切開術を施行.児は2.054g,Ap 8/9の女児で,尿道口異所性開口,腟閉鎖と鎖肛を認めたが呼吸状態は良好で,出生後,一時的にクレアチニンとBUNの上昇を認めたが尿量は保たれており腎機能は温存していると考えられた.児はその後退院し外来通院していたが頻回に尿路感染症を起こし,生後11カ月腎不全のため死亡した.【考察】今回の症例では胎児治療後妊娠30週までは経過良好であったが児の長期予後にはつながらず,今後閉塞性尿路疾患に対し胎児治療を行う場合には施行前の胎児腎機能の評価が必要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
181-181, 2002
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