|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第103回学術集会(平成14年6月9日(日))
【一般演題】
胎児・新生児(3) 妊娠後期に急速な増大傾向を認めた胎児頸部リンパ管腫の一例
清河 康, 宮越 敬, 上野 和典, 上原 克彦, 西村 修, 田中 守, 吉村 泰典, 野澤 志朗
慶應義塾大学産婦人科
胎児頸部リンパ管腫の妊娠経過に伴う縮小や消失については諸家により報告されているが,急速に増大傾向を示した症例は報告されていない.今回我々は,妊娠後期に腫瘤内の出血により急速に増大した胎児頸部リンパ管腫を経験したので報告する.【症例】患者は21歳,0経妊0経産.他院にて妊娠28週時の超音波検査にて胎児右頸部に35×16mmの腫瘤を指摘された.その後,腫瘤の増大傾向を認めたため,妊娠32週3日,精査目的で当院紹介受診となった.初診時,胎児頸部右側から背側にかけて,60×35mmの多房性腫瘤を認めた.腫瘤内部は高輝度および低輝度の混在する超音波像を認め,内部に出血を伴うリンパ管腫が疑われた.胎児MRIでは,腫瘤はT1で中間信号,T2でやや高信号のsolid massとして描出され,血管腫の可能性も示唆された.その後当院では,腫瘤径および心不全兆候に注意して経過観察としたが,著変は認められなかった.妊娠37週2日,経腟分娩時の腫瘤破裂の可能性を考慮し,選択的帝王切開術にて3,110gの女児を娩出した(Apgar score 1分値8点,5分値9点).出生後の頭頸部MRI検査では,腫瘤は多房性腫瘍として描出され,T1で低信号,T2で高信号を示した.腫瘤穿刺液は淡血性を示し,塗抹標本では多数のリンパ球を認めた.以上より,腫瘤内部に出血を伴う頸部リンパ管腫と診断された.腫瘤はピシバニールの局所注入療法にて縮小を認め,現在経過は良好である.【考察】本症例より,胎児頸部リンパ管腫においては,腫瘤内の出血によるリンパ管腫の増大の可能性についても考慮することが必要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(2)
182-182, 2002
|