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第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))
【一般演題】
妊娠合併症(感染症) Mycoplasma hominisによる帝王切開術後の創部感染の1症例
古屋 智, 児島 梨絵子, 楯 浩行, 井原 規公, 中村 光佐子, 山口 隆, 三島 みさ子, 山城 千珠, 横尾 郁子, 伊豆田 誠人, 加藤 賢朗
虎の門病院産婦人科
M. hominisはScotobacteria門,Mollicutes綱,Mycoplasmatales目,Mycoplasmataceae科に属し,細胞のない培地に生える最も小さい微生物である.細菌のもつ強靱な細胞壁を欠くため,ペニシリンまたはセフェム系抗生剤には耐性でテトラサイクリン系により阻止される特性をもつ.同分類に属するUreaplasma urealyticumとともに健常女性生殖器から高率に検出され,最近では母子感染・子宮内感染・PID・尿路感染・術後の創感染の原因として,さらに早産との関連においても注目されてきている.症例はM. hominisが原因と考えられた帝王切開後の術創部感染例であり,その臨床経過を文献的考察を加えて発表する.【症例】31歳,1G0P,性器ヘルペスの既往あり.妊娠経過に問題はなかったが妊娠39週3日に外陰部にヘルペス様皮疹が出現.40週0日に前期破水にて来院し,緊急帝王切開となった.腹直筋膜下から皮下にドレーンを留置し手術を終了.セフェム系抗生剤を術後投与していたが,術後4日目より突然39度台の弛張熱が出現.白血球は10000,CRPは8.7まで上昇.ドレーンからは膿様分泌物が排出した.また創部に一致した圧痛・硬結が出現し,皮膚発赤も伴ってきた.カルバペネム系抗生剤に変更し,術創を大きく切開し離開させた.以降,創部の圧痛・硬結・皮膚発赤は退縮し,解熱した.血液培養からは菌は検出されなかったが,破水時の膣培養・発熱時の悪露培養・ドレーン分泌物からの培養ではM. hominisが検出された.またELISA法で特異抗体の上昇が確認された.【考察】本例ではM. hominis感染に有効な抗生剤は使用されていないため,手術創に生じた膿瘍が排出されたことにより治療されたもの考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3)
242-242, 2002
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