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第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))
【一般演題】
妊娠合併症(感染症) 会陰部に発生した結核性膿瘍の1例
渕脇 泰介, 坂本 愛子, 高瀬 幸子
浦安市川市民病院産婦人科
【緒言】結核は世界的に感染が拡大しており,我が国も1997年を境に患者数が増加している.今回我々は,1年9ヶ月前の分娩時会陰切開縫合部に発生した結核性膿瘍の一例を経験したので報告する.【症例】N. M. 32歳,主婦,4回経妊,2回経産婦.家族歴;10年前,弟が結核の診断となり,入院治療を受ける.嗜好;タバコ=一日15本,酒=(−).【経過】外陰部腫瘤を主訴に初診,バルトリン腺膿腫の診断にて切開排膿術を施行.その後も創部に硬結と痛みを訴えたため,創部の洗浄消毒と抗生剤軟膏の塗布を行うが,むしろ膿瘍形成に至る.このため初回手術2週間目に膿瘍の切開排膿・硬結摘出術を施行.【手術所見】膿瘍化した会陰切開縫合部痕を切開排膿,膿瘍内小指頭大硬結を切除.これは硬く直腸壁にまで至る.術中,肛門端より約4cmの直腸壁に1.5×0.7cm大の穿孔を起こした.同部は漿膜面よりバイクリルにて2層縫合.会陰切開創(5×2.5cm)は開放のままヨードホルムガーゼ圧迫を行い,手術終了.【病理】摘出硬結中に瘻孔が存在し,類上皮細胞,ラングハンス型巨細胞,リンパ球浸潤からなる肉芽腫と壊死を伴う.【術後経過】胸部XPに陰影があり,喀痰中に結核菌が検出された(PCR法).直ちに抗結核薬の投与を開始.開放にした創部は消毒と抗生剤塗布を行い,直腸壁・会陰部ともに治癒した.【結語】一般的に妊娠は結核症の経過に影響しないとされ,結核の症状は安定していることが多い.しかし,妊娠中に初感染結核があると菌はリンパ〜血行性に全身に広がる事があると言われており,本症例の如く,会陰部にも結核の病巣を見ることがありえる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3)
242-242, 2002
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