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第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))
【一般演題】
妊娠合併症(婦人科疾患) 妊娠中に深部静脈血栓症を発症し帝王切開前に下大静脈フィルターを挿入した一例
荒木 春奈, 金子 みすず, 若菜 公雄, 高嶺 智子, 篠原 裕子, 己斐 秀樹, 久保田 俊郎, 麻生 武志
東京医科歯科大学大学院生殖機能協関学
妊娠中に深部静脈血栓症を発症し,選択的帝王切開術の適応となり,下大静脈フィルターを一時的に留置し管理した症例を経験したので報告する.症例は34歳2経妊1経産(帝王切開にて分娩).家族歴,既往歴に血栓症はない.妊娠12週ごろに左下腿の痛みを自覚したため,当院血管外科を受診したところ血管エコーにて,表在大腿静脈より末梢の深部静脈血栓症を指摘された.近医外科および産婦人科にて管理していたが,妊娠37週3日に分娩管理目的にて当科入院となった.翌日,肺塞栓症を防ぐために右肘窩静脈よりIVCテンポラリーフィルターを腎静脈分岐部より上部に挿入し,2日後(妊娠37週6日)に前回帝王切開の適応で選択的帝王切開術を施行した.児は体重2890g,Apgar score 1分後9点/5分後9点の女児であった.術直後よりヘパリン10,000IUの点滴を開始.翌日より歩行開始したが,呼吸苦などの症状はなく,ADLの拡大を促した.術後2日目にIVCテンポラリーフィルターを抜去.術後10日目の造影CTにて下大静脈腎部合流部下方7cmに壁在血栓,左大腿〜左総腸骨静脈に血栓の残存が認められたため,抗凝固療法(ヘパリン5000IU×3/dayを皮下注射,ワーファリン4mg/day内服)を開始した.術後11日目の肺血流シンチグラフィーにて多発性肺梗塞像を認めたが,呼吸苦などの肺塞栓症を思わせる症状は認めなかった.その後血栓に対しての抗凝固療法のコントロールも良好で,術後16日目に退院となった.本症例は,IVCテンポラリーフィルターを一時的に留置することによって重大な血栓,塞栓症を発症することなく安全な分娩管理ができたものと考える.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3)
245-245, 2002
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