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第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))
【一般演題】
妊娠合併症(血液疾患) 妊娠中に発症した自己免疫性溶血性貧血(寒冷凝集素症)の一例
東郷 敦子, 岩崎 克彦, 森 晃, 杉 俊隆, 井面 昭文, 信田 政子, 牧野 恒久
東海大学母子生育学系産婦人科
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)とは,赤血球に対し自己抗体が作られ溶血性貧血を起こす症候群であり温式と冷式に分類される.冷式には寒冷凝集素症と発作性寒冷血色素尿症とがあるが,その頻度はAIHAの1割に過ぎない.今回,我々は妊娠中に寒冷凝集素症を発症した症例を経験したので報告する.症例は29歳,3経妊2経産,既往歴・家族歴に特記すべきことなし.近医で妊婦検診中,平成13年12月頃より血尿が持続,他院内科受診しAIHAが疑われ平成14年1月25日(妊娠26週6日),精査目的で当院入院.入院時,Hb 5.5g/dl,網状赤血球130‰,LDH 2057U/l,寒冷凝集素32768,抗体価 IgG 963,IgM 215を認め寒冷凝集素症と診断.入院後,洗浄赤血球を輸血,寒冷暴露をさけHbは8〜9g/dlを維持,2月19日(妊娠31週5日)退院.4月11日(37週4日)自然陣発にて正常分娩(2545gの男児,Apgar 8-1,9-5)に至った.寒冷凝集素症はAIHAの1割に過ぎず,半数が特発性で高齢者によくみられ,残りは感染や白血病に関係する.その為,本症例の様な何ら既往のない妊婦に発症した症例は稀である.寒冷凝集素症の病的抗体はIgMであり胎盤通過性はなく胎児への影響はないが,温式の場合はIgGであり影響をもたらすことがある.また,冷式である発作性寒冷血色素尿症はIgGが病的抗体となる.その為,温式,冷式に関わらずAIHAの場合はIgGの抗体価は検査する必要がある.今回,妊娠中に発症したAIHA(寒冷凝集素症)の症例を経験し,我々は母体管理および胎児への影響を再認識する貴重な機会を得た.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3)
249-249, 2002
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