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第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))
【一般演題】
卵巣悪性腫瘍2 CDDPの腹腔内投与後,腎不全となり,透析を行いながら化学療法を施行して,寛解を得た進行卵巣癌の一症例
藤原 佳子, 朴 正順, 萩原 憲治, 丸 宏昭
船橋二和病院産婦人科
CDDPは卵巣癌に対する高い治療効果とともに,腎毒性の副作用が知られている.私たちは卵巣癌患者の初回手術時に,腹腔内投与したCDDPのために急性腎不全となった症例を経験した.この患者に対して,透析を行いながら,CBDCAとpaclitaxelの二剤による化学療法を行い,寛解を得たので報告する.症例は58才女性.下腹痛を主訴に精査され,直腸癌(術前生検にてadenocarcinoma)と卵巣癌の疑いにて手術(腹腔内播種のため両側付属器切除,大網部分切除のみ)を行い,この時CDDP100mgを腹腔内に投与した.術後診断はendometrioid adenocarcinoma stage IIIcであった.術前には腎機能異常は認めなかったが,術後6日目より血中Creが上昇し,血液透析を要するようになった.腎生検を行ったが,急性尿細管壊死の所見で,CDDPによる薬剤性腎不全として矛盾しなかった.その後,CBDCAとpaclitaxelによる化学療法を3コース行い,second look(同時に子宮摘出,骨盤内リンパ節郭清,直腸低位前方切除を行った)にてpositiveのため,さらに3コースを追加した.腎排泄性であるCBDCAの投与量は,経時的にプラチナ濃度を測定してAUCを計算して,調節を行った.各コースでCBDCA投与終了後1時間に,血液透析を施行した.第5コース目のAUCは4.2mg/ml. minでほぼ至適量と考えられた.副作用は軽度の顆粒球減少のみであった.6コース終了後,患者は寛解状態となっている.透析中の卵巣癌患者へのCBDCAの投与は報告が少ないが,本症例のように,血中濃度をモニターしながら安全に投与可能であることがわかった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3)
261-261, 2002
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