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第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))
【一般演題】
その他の腫瘍1 卵巣悪性腫瘍と鑑別を要した炎症性retention cystの一例
五十嵐 美和, 三浦 敦, 朝倉 禎史, 渋井 庸子, 土居 大祐, 竹下 俊行, 荒木 勤
日本医科大学産婦人科
近年,若年女性のPIDの原因としてChlamydia trachomatisによるものが増加していることは周知の事実であり,炎症に伴うCA125の上昇も報告されている.今回我々は,悪性卵巣腫瘍を疑ったChlamydia trachomatisによるPIDのretention cystの症例を経験したので報告する.症例は27歳0回経妊0回経産,下腹部痛を主訴に来院.初診時の経膣超音波で子宮後壁に接した一部充実成分を伴う多嚢胞性腫瘤を認めた.腫瘍マーカーはCA125が350U/mlと上昇,他の腫瘍マーカーの有意な上昇は認めなかったが悪性卵巣腫瘍を否定できず精査加療目的に入院となった.入院後MRI等の画像所見から卵管留水腫等の炎症性疾患も否定できず子宮頚管のChlamydia trachomatis PCR陽性であったため,塩酸ミノサイクリン200mg/day 7日間投与を行った.その後下腹部痛も軽減し超音波上多嚢胞性腫瘤は認めるも両側卵巣が正常大であることを確認,卵管留水腫の疑いにて腹腔鏡下手術施行となった.腹腔内には少量の淡黄色透明の腹水を認め,嚢胞はフィルム状の癒着により形成されたretention cystであった.壁は脆弱で子宮挙上とともに容易に破綻,内溶液も腹水同様淡黄色透明であった.手術は主に癒着剥離と止血を行った.手術後CA125 41U/mlに下降,下腹部痛も消失し7日目退院となった.PIDに伴いCA125が上昇することの報告は散見されるが,retention cystを形成し悪性卵巣腫瘍様の外観を呈する報告はない.Chlamydia trachomatisによる骨盤内病変について文献的考察をあわせ報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3)
279-279, 2002
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