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第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))
【一般演題】
子宮外妊娠 帝王切開後瘢痕部妊娠に対しメソトレキセート(MTX)局注療法が有効であった一症例
長谷川 潤一, 市塚 清健, 大槻 克文, 白土 なほ子, 横川 香, 松岡 隆, 関沢 明彦, 岡井 崇
昭和大学産婦人科
【症例】32歳,3経妊3経産3回帝王切開.家族歴,特記すべきことなし.既往歴,22歳,26歳,28歳に帝王切開.最終月経2001年11月20日.2002年2月18日,不正出血を主訴に来院.内診所見,子宮は手拳大,軟,子宮口は閉鎖,圧痛を認めない.子宮口より少量の出血を認める.経腟超音波検査にて前回帝王切開の子宮切開部と思われる子宮下部に胎嚢を認め,膀胱との境界は菲薄化しており,膀胱側に膨隆していた.CRLは22.1mm(9週1日相当).胎児心拍を認めない.前回帝王切開術後子宮瘢痕部妊娠,稽留流産と診断,入院.子宮壁が菲薄化しているため子宮内容除去術は多量出血及び,穿孔のリスクが高いと判断し,本人及び家族に1)MTXを用いた化学療法,2)腹式単純子宮全摘,の治療法及びその治療のメリット,デメリットを説明した.患者が1)の治療を選択したため,胎嚢内にMTXを局注する方針とした.膀胱内に生食150ml注入し子宮との境界部を明瞭にした後,子宮下節前壁に局麻,経腟超音波ガイド下のもと子宮頚管前壁より胎嚢に穿刺,10mlの淡血性羊水吸引後MTX50mg/6mlを局注した.副作用は肝機能障害を認めたが,入院時尿中hCGは6140IU/lからMTX投与後20日目には尿中hCGは25IU/lとなったため退院した.性器出血は少量のまま持続したがMTX投与後90日頃には消失,基礎体温も正常化,胎嚢は縮小し超音波検査上もほぼ正常の子宮となった.【考察】帝王切開後の瘢痕部妊娠は,多量出血,子宮壁の菲薄化,破裂の危険が高く,子宮内容除去術を行う際に子宮穿孔や膀胱損傷を起こす危険性が高い.今回,子宮瘢痕部妊娠例にMTXの局注療法を選択し,安全に保存治療し得た症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3)
285-285, 2002
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