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第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))
【一般演題】
産科手術 羊水穿刺後の羊水流出:正期産児を得た症例
永井 崇, 渡辺 尚, 佐藤 尚人, 桑田 知之, 泉 章夫, 玉田 さおり, 松原 茂樹, 鈴木 光明
自治医科大学産婦人科
高齢出産の増加に伴い羊水染色体分析を希望する妊婦が増えてきた.羊水穿刺の最大の合併症は羊水流出とそれにひき続く流産である.最近のrandomized studyによると羊水穿刺後の流産率は約2%と報告され,これは従来の知見(0.5%)を大きく上回る.羊水穿刺後の羊水流出の際には,人工妊娠中絶が選択されることがある.これは正しい選択だろうか?今回,我々は示唆に富む症例を経験した.症例:41歳.子宮筋腫核出術既往あり.凍結胚移植にて妊娠.2001年11月26日(妊娠15週2日),本人より染色体検査の希望あり羊水穿刺目的にて入院.翌日(15週3日)11時に羊水穿刺施行.超音波ガイド下にPTCD針にて穿刺し,15mlの羊水を採取した.同日13時30分に,本人より破水感の訴えあり.腟鏡診にて明らかな羊水流出を確認.超音波検査にて胎児心拍を確認したが羊水腔はほぼ消失していた.卵膜破綻部の自然閉鎖を期待し,安静,塩酸リトドリン内服,抗生物質点滴静注にて経過を観察していたところ,穿刺翌日には羊水流出が止まり,羊水ポケットは穿刺後4日目に10mm,14日目に20mm,21日目には29mmと正常化し,12月25日(19週2日,穿刺後28日目)に退院した.その後の外来での妊婦健診ではとくに問題なく経過した.子宮筋腫核出術の既往を考慮し,2002年4月30日(妊娠37週3日)に選択的帝王切開術施行した.新生児は2614g女児で異常を一切認めず,母児ともに経過良好で術後8日目に退院した.羊水穿刺後に羊水流出し羊水腔が消失しても,本例のように待機療法のみで健児を得られる症例がある.羊水流出の時点で妊娠継続を断念する必要はない.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3)
290-290, 2002
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