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第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))

【一般演題】
胎盤の異常
MTX療法により子宮を温存し得た癒着胎盤の1例


若林 真紀, 上杉 賢哲, 石井 譲, 小幡 新太郎
成田赤十字病院産婦人科


 癒着胎盤は4000〜7000分娩に1例の割合で起こる稀な疾患で,緊急の処置を要し,治療法として子宮内容除去術,化学療法等の保存療法があるが,感染やDICを起こした場合子宮摘出を余儀なくされることも多い.今回我々は,大量出血や感染を起こさず,MTXを用いた化学療法により子宮を温存し得た癒着胎盤の1例を経験したので報告する.症例は29歳の女性,0G0P.平成14年3月12日他医にて吸引分娩で出産,その後胎盤娩出されず,用手的にも剥離できなかったため,当科紹介受診,同日入院となった.経膣及び経腹超音波では,子宮内に遺残する胎盤を認めた.また,カラードップラーにて胎盤付着部の子宮壁と胎盤の一部に血流を認めた.発熱,CRP上昇のため抗生剤,子宮収縮剤投与したが胎盤は自然排出されなかった.感染徴候がなく,患者,夫ともに子宮温存を強く希望されたため,保存的療法で子宮を温存する方向で治療方針を決定した.平成14年3月16日よりMTXによる化学療法を開始.MTX 20mg×5日間を計4コース施行した.この間,血中のβHCGは4078 mIU/mlから34.5 mIU/mlまで低下した.また,MTX療法後の経腹超音波,MRIでは遺残胎盤の縮小をみとめ,カラードップラーにて血流の消失が確認された.血中のβHCGは0.0mIU/mlまで低下し,少量の出血が始まったため胎盤の剥離徴候と判断し,平成14年5月30日(分娩後78日目)子宮内容除去術を施行.超音波上遺残胎盤は殆ど消失した.術中の出血量は440gであった.退院後は異常なく,現在外来にて経過観察中である.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3) 291-291, 2002


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