|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))
【一般演題】
胎児・新生児1 出生後急激に状態悪化しオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症と診断された1例
崎山 ゆかり1), 櫻井 麻美子1), 永井 宣久1), 佐藤 伊知朗1), 持木 昭人1), 大久保 喜彦1), 寺本 勝寛1), 山本 樹生2)
山梨県立中央病院総合周産期母子医療センター母性科1), 日本大学産婦人科2)
【はじめに】オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(以下OTCD)は,発生頻度8万人に1人と稀な疾患で予後不良である.今回我々は妊娠経過中問題なく,出生後急激な新生児経過をたどりOTCDと診断された1例を経験した.【症例】21歳2妊1産.前児は空腸閉鎖にて手術され経過良好である.今回妊娠は初期より当科で管理し,経過中異常を認めなかった.39週1日,前回帝切にて予定帝王切開施行.2,702g男児Apgar 9点で出生,日齢1まで問題なく母乳哺育を行った.日齢2に突然の嘔吐,無呼吸,著明な筋緊張低下を認めNICUに入院.アンモニアの上昇(900μg/dl),代謝性アシドーシス,軽度の肝機能障害と,母系に男児4名の原因不明の新生児死亡があり先天代謝異常症が疑われた.高アンモニア血症の改善を目的に持続的血液濾過透析(以下CHDF)を施行され,血中アミノ酸分析・尿中有機酸分析によりOTCDと診断された.CHDFは断続的に日齢15まで行われた.必須アミノ酸の低下に対し日齢9より補充療法,日齢16からは除蛋白ミルク,安息香酸ナトリウム,シトルリンおよびアルギニンの投与が行われた.CHDF中止後アンモニアの急激な再上昇は認めなかったが徐々に活動性の低下と全身の浮腫が出現し日齢23に死亡した.【考察】今回の症例は新生児の急激な経過の後に家族歴を再確認し母系男児の新生児期死亡が判明した.出生前に診断し得た場合は新生児科との連携により早期に計画的な治療が行えた可能性があると思われ,産科管理において家族歴は重要であるが同胞以外の血縁の場合は患者自体の認識も浅く,改めてその情報獲得の難しさを実感した.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3)
301-301, 2002
|