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第104回学術集会(平成14年10月19日(土),20日(日))
【一般演題】
感染症 癌性腹膜炎との鑑別診断に苦慮した結核性腹膜炎の一症例
笠原 慶充, 横田 英巳, 齋藤 智子, 南雲 秀紀, 福田 正樹, 高橋 優四郎, 野上 保治, 山田 清彦, 飯島 協子, 五十嵐 正雄
社会保険群馬中央総合病院産婦人科
近年再燃傾向にある結核性疾患のなかでも結核性腹膜炎は比較的稀な疾患で卵巣癌,癌性腹膜炎と類似の臨床像を示し,診断に苦慮することが多い.今回経験した一例も大量の腹水,腫瘍マーカー上昇を認めたため卵巣癌を疑い数回腹水細胞診行ったものの診断が確定せず,結局術前化療前の試験開腹での生検及び腹水の結核菌培養の結果初めて確定診断がついた.尚本症例は専門病院へ転院し加療となり完治に至った.【症例】76歳,3妊3産,昭和60年,卵巣腫瘍にて附属器切除,昭和62年,脳梗塞にて入院.平成13年6月腹部膨満感にて前医受診.精査行うも腹水貯留以外著変認めず,また,CA125の上昇認めたため,卵巣癌を疑い,数回腹水細胞診施行するも異常を認めず.癌性腹膜炎疑いにて平成13年8月当科紹介となった.超音波,CT,MRIにても卵巣は正常大,著明な腹水貯留のため癌性腹膜炎を疑い精査加療目的にて入院.腹水細胞診にて悪性細胞証明後,NAC施行予定であったが,3回の腹水細胞診にても悪性細胞を証明できず,その間消化管疾患等の精査を行うも異常なし.CA125 651IU/ml.ツ反陰転化のため,肺結核精査するも異常なし.確定診断つかないため,本人および家族の承諾を得て試験開腹とした.術中の腹水PCR法にて結核菌陽性となり結核性腹膜炎の診断にて専門病院へ転院となった.転院後,抗結核療法施行し,完治した.【結語】結核は古くて新しい病気と言われるが実際の臨床上では十分な経験を積む機会はそれほど多くなく,また今回のようにツ反陰性の症例もあり診断に苦慮することが多い.常に念頭におきながら診療を行う重用性を改めて考えさせられた症例であった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 39(3)
318-318, 2002
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