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第105回学術集会(平成15年6月8日)

【シンポジウム1】
子宮筋腫の治療を再考する―妊孕性温存を含めたQOLの改善を目指して―
3.TCR


林 保良
川崎市立川崎病院


 子宮筋腫は婦人科を受診する外来患者の中でもっとも多い疾患の一つである.中でも症状の一番強いのは粘膜下筋腫で,過多月経,不正出血,貧血,不妊などを訴える.出血などの症状が強いので患者が結構不便な生活を強いられることがしばしばある.近年内視鏡の進歩により,ある条件下の粘膜下筋腫は子宮鏡下に筋腫核出することが可能となった.この方法は開腹手術に比べ,はるかに侵襲が少ない.また平成8年4月から子宮鏡下子宮筋腫摘出術として正式に保険適用(12500点)となり,現在注目されている術式のひとつである.以下に,我々の粘膜下筋腫の取り扱いについて解説する.
 A対象.筆者の手術適応条件は以下の通りである.1.過多月経または不正出血のあるもの.2.子宮の大きさ≦妊娠12週程度(子宮消息診で12cm以内).3.粘膜下筋腫の最長径が<6cm.4.子宮内腔に近い筋層内筋腫の直径が≦3cm.5.漿膜筋腫間距離(漿膜と筋腫核の最外側との間の距離)Serosa-Myoma Thickness(SMT)は≧5mm.6.子宮に悪性病変のないもの.B.術前検査.1.超音波断層法 我々は必ず子宮鏡検査の直後,子宮腔内にまだ灌流液が残っているとき(ソノヒステログラフィー)に腟式プローブで子宮内粘膜下筋腫の状態を観察する.2.子宮鏡検査.C. GnRHアゴニストの投与.術前の前処置としてGnRHアゴニストを10ないし12週間投与する.D.手順.患者を手術の前日に入院させ,就寝前に頚管内にラミナリア桿1本を挿入し,頚管の軟化と拡張をはかる.切除方法は以下の如くである.1.筋腫を筋層から剥離する(筋腫茎部の処理).2.筋腫を十字架状に切開する(体部の処理).我々の方法の利点は1.1回の手術で粘膜下筋腫を完全に切除ができる.2.子宮内膜も多めに保存される.3.術中の子宮穿孔は避けられることである.E.術後成績.1985年から2003年2月までに計1627例の粘膜下筋腫を切除したがほとんどの患者は術後症状が改善されている.切除された検体の重量(1592例)は0.3〜800g,平均重量は26.7±38.4gであった.手術時間(1597例)は2〜150分,平均30.7±20.4分であった.2例の子宮穿孔があったが,1例は腹腔鏡下で修復し,他の1例は経過観察だけで無事退院した.800gの筋腫分娩例はTCRによる切除後,子宮内反を引き起こし,修復が不能のため,子宮全摘を行った.長期追跡の結果は,子宮全摘をした患者は34例,腹式筋腫核出術16例,再TCR 43例,流産8例,外妊1例,早産1例,妊娠中8例,満期産は127例(経腟分娩100例,帝王切開27例)であった.F.結論.TCR手術は患者への疼痛が少なく,回復が早く,しかも過多月経,不正性器出血などの症状による不便な生活から開放されるので有用な術式と考える.また子宮鏡下手術には軽度から重篤までの合併症がある.術者がこれらのことを熟知し,症例数を重ねて技術を習得すべきである.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2) 146-146, 2003


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