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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【シンポジウム2】
妊産婦の薬物療法を再考する―有効性と安全性の確立を目指して― 1.薬の催奇形性
林 昌洋
虎の門病院薬剤部
サリドマイド事件が教訓となって医療従事者はもとより一般の妊婦にも薬物の催奇形性に対する認識が浸透し,むしろ過剰な不安を抱く傾向がある. このため妊娠中の薬物療法では,母体への有効性と母体及び胎児への安全性の観点から薬物を選択した上で,妊婦自身が薬物の必要性と安全性を理解できるよう説明し,積極的に治療に参加できるよう指導する必要がある. 当院では,妊婦の服薬に対する不安を解消する目的で,産婦人科と薬剤部が共同で「妊娠と薬相談外来」を開設し,催奇形情報の提供やカウンセリングを行っている. 相談者数は,ここ10年間約500例で推移しており2003年3月末の累計で6,769例を数えている.この間に催奇形性を調査した薬物,化合物は3,470品目にのぼっている. 妊婦を対象とした臨床試験は倫理的問題から実施困難である.したがって,薬物の催奇形性を評価する為には,催奇形の発現機序に関する基礎実験,動物を用いた生殖試験,薬物の胎盤通過性等の基礎データと,臨床で得られる薬物曝露症例の出産結果,催奇形に関する疫学調査等総合して判断をしていく必要がある. 当院の妊娠と薬相談外来で行っている薬物の催奇形性評価,催奇形の危険度の高い薬物,妊婦及び胎児への有効性と安全性の根拠情報を有する薬物,妊婦カウンセリングの実際について紹介し,わが国の臨床における薬の催奇形性を考察する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
148-148, 2003
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