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第105回学術集会(平成15年6月8日)

【シンポジウム2】
妊産婦の薬物療法を再考する―有効性と安全性の確立を目指して―
2.子宮収縮抑制剤の有効性


高木 健次郎
日本大学


 最近,米国では子宮収縮抑制剤(tocolytic agent:以下TAと略す)の治療効果に関して短期的な効果しか認められないとする報告が多く,長期投与によるメリットは少ないと考えられている.早産あるいは切迫早産は種々の原因・病態が含まれる症候であり,一律に子宮収縮抑制を行うことに問題があることも事実である.例えば妊娠中毒症重症型や常位胎盤早期剥離なども結果的には早産となる疾患であり,また絨毛羊膜炎や前期破水,頚管無力症,原因不明の切迫早産などもそれに含まれる.そのため,当然それら全てに対してTAの治療効果を期待することは適切ではないと考えられる.そこで今回,最近行われた本邦における多施設共同による切迫早産実態調査(代表世話人:佐藤和雄,寺尾俊彦)の集計を基にTAの使用状況とそれによる効果について報告する.調査期間は平成10年7月から6ヶ月間で,臨床的に切迫早産と診断されTA使用の有無に係らず入院治療が行われた妊婦を対象とした.調査票記入によりretrospectiveに調査,解析を行った(解析例数1251例).対象の背景としては,単胎;84.8%,未破水;85%,子宮内感染なし;90.6%,頚管縫縮術施行;13.1%などであった.TAの使用については,無しが102例(8%)でほとんどの例で何らかのTA投与が行われており,さらに2剤以上のTAを使用したものは467例(37%)であった.使用された薬剤中,最も多かったのは塩酸リトドリン注射薬で(992例;86%),次いで塩酸リトドリン経口錠(29%),硫酸マグネシウム注射薬(20%)の順であった.各薬剤の治療効果についてはtocolysis index(TI)により重症度別に検討したところ,TI;3〜6, TI>7の群でTA投与による妊娠期間の延長効果が認められた.またTI;3〜6,治療開始が妊娠32週未満の236症例を対象として,妊娠32週以降の妊娠継続の可否を予後判定基準としてロジスティック回帰分析を行った.その結果,妊娠32週未満で分娩となる相対リスク(odds比)が有意に高かった因子としては破水,子宮内感染,子宮口開大,子宮出血という結果になった.逆に「入院時妊娠週数>28週」,「リトドリン点滴治療あり」ではodds比は有意に低かった(危険低下因子).
 これらの結果は切迫早産治療におけるリトドリン点滴の有用性を示唆するものであり,また長期投与においても治療効果が期待される結果であると考えられた.
 以上の集計結果をもとに,国外の報告例も参考にして早産管理における子宮収縮抑制の意義と治療薬剤の有効性に関して報告する.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2) 149-149, 2003


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