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第105回学術集会(平成15年6月8日)

【一般演題】
卵巣腫瘍(1)
皮様嚢腫悪性転化症例の術後にChemoraditotherapyを行い,著効を示した一例


服部 美奈子, 樋田 一英, 梅崎 泉, 山田 律子, 矢島 正純, 太田 博明
東京女子医科大学産婦人科


 卵巣成熟嚢胞性奇形種(皮様嚢腫)の悪性転化の頻度は1.4〜4.8%と報告されている.本腫瘍における被膜破錠例の予後は不良であり,確立した治療法はない.今回我々は全身状態不良の悪性転化を伴う皮様嚢腫の被膜破錠例における術後残存腫瘍の症例に対し,Dailyカルボプラチンを用いたChemoraditotherapyを施行し,奏功した一例を経験したので報告する.症例は55才,0経妊,全身倦怠感を認め,前医受診し悪性転化を伴う皮様嚢腫を疑われ,当科紹介となった.入院時体温38.1℃,腹膜炎症状を伴い,白血球21300/μμ)l,CRP16.35mg/dl,SCC 17ng/ml,CA19−9 1900ng/mlであった.またMRIで両側卵巣腫瘍と右の被膜破綻を認めた.腹式単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術施行したが,腹腔内には油滴を伴う腹水多量で,破綻した右皮様嚢腫様の腫瘍が骨盤へ深く浸潤していた.病理組織診断はsquemous cell carcinoma,keratinizing typeで,皮様嚢腫の悪性転化を伴った右卵巣癌,ステージIIcと診断した.腫瘍は一部残存があったため,後療法を要したが,皮様嚢腫悪性転化の進行例では有効な化学療法はなく術後療法としてChemoradiotherapyを選択した.しかし,癌性腹膜炎,腎機能低下のため全身状態不良で,標準とされているweeklyのシスプラチン投与には耐えられないと判断し,AUC 1/week相当のカルボプラチンdakily投与とした.術前22ng/mlまで増加したSCCは現在2.3まで低下し,現在のところ局所のコントロールは良好である.このChemoradiotherapyは,皮様嚢腫の悪性転化ばかりでなく,明細胞癌など化学療法抵抗性の卵巣癌にも有用である可能性があると思われた.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2) 164-164, 2003


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