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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
卵巣腫瘍(1) 類皮嚢胞腫の悪性転化の一例
田口 彰則, 竹下 茂樹, 桧垣 博, 町田 亮太, 堀 祐子, 藤野 剛, 大江 英一, 梁 栄治, 綾部 琢哉, 森 宏之
帝京大学産婦人科
今回我々は悪性転化した類皮嚢胞腫の一例を経験したので報告する.症例は69歳,2回経妊2回経産.平成14年1月頃から腰痛が出現.4月6日近医を受診し,臍上部にまで及ぶ腹部腫瘤を認められたため当科へ紹介された.腫瘤の可動性は悪く,超音波検査では一部充実部分を伴った境界不明瞭な嚢胞性腫瘤を認め,類皮嚢胞腫に相当する所見であった.MRIでは鏡面像を呈する嚢腫とともにT1強調画像で低信号,T2強調画像で中間信号を示す充実性腫瘤が認められた.腫瘍マーカーはCA125:1218U/ml,CEA:404ng/ml,CA19−9:1593U/ml,SCC:710ng/mlであった.また腫瘍の圧排によると思われる両側の水腎症及び下肢の浮腫を認めた.以上より類皮嚢胞腫の悪性転化を強く疑った.4月26日,開腹術施行.左卵巣腫瘍は成人頭大で可動性はほとんどなく,子宮は右側に強く偏位し,右卵巣は確認できなかった.腫瘍の周囲は骨盤壁と広汎かつ強固に癒着していた.腟上部切断術,左附属器部分切除,両側尿管ステントカテーテル挿入術を施行した.Mature cystic teratoma with malignant transformation,pT3cNXM0,stage3cで,術後weeklyにパクリタキセル,カルボプラチン療法を施行.治療にやや反応したが全身状態悪化し,腎不全のために7月22日死亡した.卵巣類皮嚢胞腫の悪性転化は1〜2%の頻度でおこるとされているが,発見が遅れると極めて予後不良である.特に高齢者の類皮嚢胞腫ではS常に悪性転化を念頭において対応することが必要であると思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
165-165, 2003
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