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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
卵巣腫瘍(2) 高カルシウム血症をきたした卵巣癌の一例
田口 雄史, 宮川 美帆, 木田 達平, 小林 優子, 武者 由佳, 安堂 裕介, 伊藤 茂, 野島 美知夫, 吉田 幸洋
順天堂大浦安病院産婦人科
悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症はMAH(malignancy-associated hypercalcemia)と呼ばれ,高カルシウム血症による多彩な臨床症状を呈する.その多くは悪性腫瘍末期に合併することが多く,その臨床症状を見逃してしまう事により,患者のQ. O. Lの低下を来す事がある.今回我々は,卵巣癌末期に高カルシウム血症,意識障害を来したが,ビスホスホネート製剤の使用で症状の改善をみた一例を経験したので報告する.症例は53才,女性.卵巣類内膜腺癌,stage IIIcで平成13年8月,初回手術施行,術後補助療法として化学療法を選択したが,徐々に状態悪化,腹腔内を占拠する巨大腫瘍も出現し,癌性腹膜炎の状態であった.平成14年12月28日,全身倦怠感,嘔吐,見当識を主訴に緊急入院となった.癌末期の症状と考えられたが,入院時データ上,血中Ca値:17.8mg/dlと高度の高カルシウム血症を呈していた.同日パミドロネート(アレディア)30mgとフロセミド(ラシックス)40mgを点滴静注したところ状態は少しずつ改善,血中Ca値も12月30日:13.7mg/dl,1月2日:9.6mg/dlと正常化した.その後も嘔気,精神症状と血中Ca値は比例して推移し,パミドロネートの定期的な投与により,Q. O. Lの改善が図られた.悪性腫瘍末期の症例では,多彩な症状を示すが,その一因にMAHがある可能性も念頭において,定期的に血中Ca値の測定が必要だと考えられた.また,MAHに対してはビスホスホネート製剤の使用によって諸症状の改善が認められた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
168-168, 2003
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