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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
卵巣腫瘍(3) 深部静脈血栓症の発症にて発見された卵巣癌の一例
石井 美希子, 齊藤 俊雄, 穴山 玲子, 佐川 泰一, 林 敏, 鈴木 康伸, 清川 尚
船橋市立医療センター産婦人科
近年,深部静脈血栓症・肺塞栓症(DVT・PE)に対する認識の高まりから致命的なPEの発症予防が積極的に行われるようになっている.DVTは妊娠・産褥期,産婦人科手術後に発症する報告は多いがDVTより婦人科腫瘍が発見される事は稀である.今回,急激なDVTにて発見された卵巣癌の一例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する. 症例は61歳 2G-2P.平成14年8月21日突然の吐気・嘔吐,左下肢の急激な腫脹を認めたため当センター受診.受診時 左下肢の腫脹は著明で発赤を認めHoman signは陽性であった.超音波カラードップラー法にて左腸骨静脈以下の血栓,右膝窩静脈以下の血流低下,また腹部に小児頭大の骨盤内腫瘍を認めDVT及び骨盤内腫瘍の疑いにて産婦人科入院となった.CT,MRI上子宮右後面に多房性・充実性の卵巣腫瘍,左右大腿静脈内血栓が認められた.肺シンチグラフィーで肺野に欠損陰影は無く,アンギオグラフィーにて左腸骨静脈以下の閉塞を認めた.手術操作に伴う,遊離血栓によるPEを考慮してpermanent typeのIVCフィルターを挿入し周術期に抗凝固療法としてヘパリン投与,弾性包帯装着を施行し10月1日手術となった.手術は子宮全摘術,両側付属器切除術,大網切除術,リンパ節郭清,リザーバー植え込み術を施行した.病理診断は明細胞癌IIIc期であった.術後抗凝固療法としてヘパリンよりワーファリンに切り替えDVT・PEを起こすことなく,現在TJ療法加療中である. DVTを合併した症例では重篤なPEをきたし死亡する例もあり,その予防としてIVCフィルターは有用であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
169-169, 2003
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